2025年11月25日火曜日

















 【今週の一枚】











dexter in the newsagent - Time Flies [RULESTHEWORLD RECORDS 2025]

南ロンドンのCharmaine Ayokuによるソロ・プロジェクトdexter in the newsagentによる新作ミックス・テープ。

収録時間は30分とやや短尺であるものの、先行リリースした3曲を含めた全12曲のこの作品をあえてデビュー・アルバムと呼ばない事になにか意図があるんだろうか。

2021年に弱冠18歳にしてデビューEP「I Do Love a Good Sandwich」をリリースした彼女、2025年現在でおそらくまだ22歳という事になるワケだが、その音楽はとても若手ミュージシャンが作ったものとは思えない程に完成されている。

自ら爪弾くアコースティックギターの柔和な響きと可憐極まりない歌声がサウンドの主軸には置かれているが、電子音のエフェクトもごくナチュラルに施されており、メロディの素晴らしさも相俟って聴いていて本当に心地よい。

最初の曲をSpotifyにUPした際に**Dexter**と名乗った理由が「家族にバレたくない」というものだったというのだから実に微笑ましい。

気の毒な事に彼女の父親が亡くなってしまったそうで、その経験が今作を制作するきっかけにもなった模様。

彼女の才能は先達のミュージシャン達にも評価が高いようでdexterはDenzel Curryのツアーに帯同し、今をときめくFred Again.. のサポートアクトも務めたのだとか。

いずれにしても末恐ろしいばかりの才能の登場に心躍らされる思いだ。







2025年11月17日月曜日

ひかり











 【今週の一枚】














Rosalía - LUX [Columbia 2025]

もし今年発表されたアルバムで自分が聴いたなかで一枚だけ挙げるとしたら間違いなくこの作品を選ぶ、そう確信させられた。

バルセロナの歌姫Rosalíaの3年ぶりの4thアルバム。

前作「MOTOMAMI」がかなり攻めた内容だったのに比して今回はかなりオーセンティックな路線に回帰している印象(とはいえ十分攻めているとも言えるが)。

先行リリースされた「Berghain」を聴いてその壮大なオーケストレーションを施したアレンジに度肝を抜かれ、大いに期待していた今作、その期待を遥かに超えていた、というのが正直な感想だ。

アート・ポップ、クラシカル・クロスオーバー、フラメンコ・ポップ、オーケストラル・ポップと様々な形でカテゴライズされる彼女の音楽だが、今回の作品はそれらの音楽的要素が絶妙な統一感を持って一枚の芸術作品に昇華されている。

既にグラミー賞を受賞し、これまでの活動で世界的な名声を獲得している彼女、この「LUX」で創造性の高みに達し、ケイト・ブッシュやビヨーク(今作にゲスト参加)の系譜に連なる、歴史にその名を刻む女性アーティストである事を証明したとは言えまいか。

所謂捨て曲はひとつもない今作にあっても2曲目の「Reliquia」には特に感銘を受けた次第。

因みにタイトルの「LUX」はラテン語で光を意味するんだそう。








2025年11月10日月曜日

Anaïs Anaïs

 










【今週の一枚】














anaiis - Devotion & The Black Divine [5DB RECORDS 2025]

anaiis は、ロンドンを拠点とするフランス系セネガル人のシンガーソングライター。

アナイスという名前は英語圏で言うトコロのアンナであり、1980年にフランスでヒットしたAnaïs Anaïsという香水がきっかけで、仏国内でアナイスという名前を付ける親が相次いだんだそうな。

仏トゥールーズ生まれの彼女、幼少期からダブリン、ダカール、オークランド、ニューヨーク、そしてロンドンなど、様々な都市を転々とし、彼女はニューヨーク大学ティッシュ芸術学校で音楽を学んだ模様。

2018年にデビューEP「Before Zero」をリリースしたのち幾つかのシングルを発表、サウス・ロンドンのTOUCHING BASSからリリースされたデビュー作「This Is No Longer A Dream」に続きウェスト・ロンドンを拠点にする5DB RECORDSからニュー・アルバムを届けてくれた。

その音楽スタイルはかなりオーセンティックなR&B、ソウル・ミュージックの文脈にありつつもエクスペリメンタルな側面を兼ね備えており、クール極まりない風貌も併せて独特の存在感を放っている。

今年佳作アルバム「wishful thinking」を世に放ったDuval Timothyも彼女の才能を大いに評価しているとの事、これからも大いに飛躍を期待したい才能とは言えまいか。








2025年11月5日水曜日

一発

















 【今週の一枚】














crushed - no scope [Ghostly International 2025]

crushedはBre MorellとShaun Durkanによるデュオで今作が1stアルバム。

BreはTemple of Angelsのヴォーカリストとしても活動、ShaunはTopographiesやWeekendの元メンバーという経歴を持つ。

それぞれLAとポートランドに在住する二人、遠隔からリモートで作品作りを進めるという現代風のユニットだ。

ドリーム・ポップの括りで語られる事の多い彼等、トリップホップやブレイクビーツ、90年代オルタナティブの影響も色濃く感じさせる。

この作品に先立つEP「extra life」で大きな話題を呼んだcrushedはGhostly Internationalとの契約に漕ぎつけ、満を持して今作を完成させたとの事。

当初はセルフ・プロデュースで作品作りをしていた二人だが、Japanese BreakfastやWeyes Bloodの作品に携わったJorge Elbrechtを共同プロデューサー兼ミキサーに迎え今回のアルバムの制作が進められた模様。

カナダのStarsの往年の作品が想起させられもしたが、このcrushedはデュエットのスタイルは採らず楽曲毎にヴォーカルを分担しており比率的にはBreが歌う楽曲が多いのだけれど、Shaunのヴォーカルも冴え渡っている。

アルバムの終盤Shaunの歌うweaponxとBreによる「celadon」の2曲が今作のハイライトのように思えた。

それにしてもこういう最新技術を用いつつも、どこかノスタルジックなムードの音が今の時代の空気なのかな、と思わされたり。