2026年3月9日月曜日

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 【今週の一枚】














threetwenty - Separate From The Noise [New Century Sound 2025]

threetwentyはナイジェリア系米国人シンガーIvana Nwokikeとスウェーデン人プロデューサーFilip Hunterによる夫婦デュオで今作がデビュー・アルバム。

二人が主宰するNew Century Soundよりリリースされた。

Ivanaは妹のJessicaとの姉妹ユニットVanJessとして活動していたキャリアの持ち主で、2018年にアルバム「Silk Canvas」を発表している。

threetwentyの名称は二人が出会ったのが2018年の3月12日であったこと、そして聖書のエフェソス人への手紙第3章20節に由来するんだそう。

90年代ネオソウルの影響色濃いR&Bサウンドは実にスイートなテイストで聴いていて本当に心地良い。

アルバムに先行して「Who Are You To Me」、「Let Me Grow」、「The Light (I Need You)」がドロップされておりこの3曲を含めアルバム全体を通してソング・ライティングの完成度が高いと思える。

ジャズ・ファンクやヒップホップからもインスピレーションを受けているそうだが、温かみを感じさせる独特のグルーブ感は実に格別なものと言えるだろう。







2026年3月2日月曜日

折紙












 【今週の一枚】














Kevin Atwater - Achilles [Mutual Friends 2025]

シカゴ出身で現在はNYを拠点に活動するSSW、Kevin Atwaterによるデビュー・アルバム。

アコースティック・ギターのフィンガー・ピッキングのサウンドを主体に流麗なストリングスが施されたり、往年のエモのバンドの数々を彷彿させるようなラウドなバンド・サウンドを展開している様は強烈な印象を残してくれる。

Queerとしてのアイデンティティを包み隠さず、リリックにも反映させた歌の数々は繊細かつ内省的で、癒しを感じさせてくれる。

Nick DrakeやJoni Mitchellへの憧憬を公言しAdrianne LankerやSufjan Stevensといったアーティストに強いシンパシーを感じるという彼だが、今年16年ぶりの来日公演を果たすKings of Convenienceなんかにも通ずる音楽性だと思える。

冒頭の「Threat」からして美しいとしか言いようがないが、続く「Jamie's Daydreams」の疾走感も格別だ。

「Origami Roses」もシンプルながらなんとも味わい深い楽曲となっており、ラストを飾るタイトルトラック「Achilles」のダイナミズムは感動的ですらある。

今作のプロデューサーはHazel Eyesが務め、全てのソング・ライティングをKevin自身がを手掛けた模様。







2026年2月19日木曜日

異質











 

【今週の一枚】














feeo - Goodness [AD 93 2025]

なんだかとても異質な感覚を覚えてしまった。

倫敦を拠点に活動するfeeoことTheodora Lairdによるデビュー・アルバム。

Nic Taskerが主宰するAD 93レーベルからリリースされた。

往年のサッド・コアやPortisheadに代表されるトリップ・ホップの系譜に連なるようにも感じられつつも、どこか逸脱しているように思えてならない。

フィールド・レコーディングや環境音を取り入れたダーク・アンビエント、ドローン・ノイズを駆使したサウンドは不穏な空気に纏われつつも、どこか癒しをも醸し出しつつ、宗教音楽をも連想させる。

全てのソング・ライティング、プロデュース、ミキシングそしてアートワークを自身が手掛け、マスタリングはNoel Summervilleが担当。

彼女の父は英国人俳優Trevor Lairdで、オープニング・トラックの「Days pt.1」と終盤の「Days pt.2」で実に深みのあるポエトリー・リーディングを披露している。

3曲目の「Requiem」は今作のハイライトと言える楽曲と言えるのではなかろうか。

ロレイン・ジェイムスとのコラボレーションを始め、活況を呈するロンドンのシーンにおいて存在感を放つ彼女の今後の躍進に注目したいトコロだ。








2026年2月13日金曜日

無限












 

【今週の一枚】














Big Thief - Double Infinity [4AD 2025]

もうこのヒト達はハズレを出しそうにないな。

そんな風にさえ感じさせられたBig Thiefによる6枚目のスタジオ・アルバム。

称賛を浴びた前作「Dragon New Warm Mountain I Believe In You」の続編にあたる位置づけだという今作、ベーシストにしてフォウンダー・メンバーであったMax Oleartchikが脱退、Adrianne Lenker、Buck Meek、James Krivcheniaのトリオとして初めての作品となった。

Adrianneが毎日作曲している楽曲のうち50曲から9曲が厳選され、マンハッタンの名門パワー・ステーション・スタジオで3週間にわたり毎日9時間のセッション形式でレコーディングが進められたそう。

ゲスト・ベーシストにはJoshua Crumblyが迎えられ、Hannah CohenやLaraaji等総勢10名の面々が客演している。

オープニング・トラックにしてリード・シングルとなった「Incomprehensible」からして掴みは完璧と言え、続く「Words」も感動的。

「Grandmother」はバンドの真骨頂ともいえるフォーキッシュ・ロックが堪能出来るし、続く「Happy With You」なぞは80年代ネオ・アコースティックの名曲と比肩するクオリティと言えるのでは。

まだまだ彼等の快進撃は続いていきそうだ。




2026年2月5日木曜日

repressive


















 【今週の一枚】














dodie - Not For Lack Of Trying  [Doddleoddle 2025]

UKエセックス出身のフィメイルSSW、DoddlことDorothy Miranda Clarkによる4年ぶりのセカンド・アルバム。

2007年7歳のときに初めて自身のYoutubeチャンネルを開設し配信をスタートしたというから、かなり早熟な少女だった彼女、2019年にはJacob CollierとのコラボレーションでBeatlesの「Here Comes the Sun」のカヴァーを披露、大いに注目を集めた模様。

2021年にデビュー・アルバム「Build a Problem」をリリースし好評を博したのち2023年には, Orla Gartland、Greta IsaacそしてMartin Luke BrownとバンドFizzを結成、アルバム「The Secret to Life」を発表している。

ジャズやクラシック、フォークの影響を感じさせるインディー・ポップのスタイルの彼女の音楽だが、先行配信された「I Feel Bad For You, Dave」はボサノバ風の軽妙な曲調が印象的だ。

今年発表されたブルーノートの『Re:imagined』シリーズの「チェット・ベイカー・リイマジンド」にも「Old Devil Moon」のカヴァーで参加、ジャズ・ファンの間でも注目を集めているそう。

様々な表情を見せる楽曲が並ぶ今作だが、彼女の歌唱スタイルは一貫して抑制的で、それがなんともセクシーに聴こえるのが実にクールだと思えた次第。



2026年1月29日木曜日

待望














 【今週の一枚】














Sturle Dagsland - Dreams And Conjurations [Sturle Dagsland 2025]

ノルウェーの奇才デュオSturle Dagslandによる4年ぶりのセカンド・アルバム。

Sturle DagslandとSjur Dagslandの兄弟によるこのユニット、ライブではCarl Tomas Nisingと

Eirik O. Heggenの二人のサポート・メンバーが参加する事が多いようだ。

2021年の1stを聴いたときにそのエクストリーム極まりないサウンドに度肝を抜かれたものだが、今作も同等かそれ以上のインパクトと言えるだろう。

変幻自在ともいえるSturleのボーカルは唯一無二であり、ベクトルは違えどコクトー・ツインズのエリザベス・フレイザーの全盛期をすら彷彿とさせる。

エレクトロニクスを駆使しつつ北欧の伝統的な民族楽器やアフリカのコラ、中国の古筝など世界中の楽器を使用し、重層的なサウンドを構築している様は本当に圧倒的だ。

アバンギャルドでエクスメンタルでありつつどこか牧歌的な側面をも持ち合わせた音世界、実に不思議な魅力をたたえている。

1stリリース後の初来日公演はスケジュールの都合で泣く泣く諦めたのだが、来週末金曜日に青山の「月見ル君想フ」で遂にそのパフォーマンスを初めて観る事が出来る予定で、今から待ち遠しくて仕方がない。







2026年1月22日木曜日

















 【今週の一枚】














Ambre Ciel - still, there is the sea [Gondwana Records 2025]

カナダのモントリオール出身の作曲家兼シンガーAmbre Cielによるデビュー・アルバム。

Hania RaniやJasmine Myra等を擁する英Gondwana Recordsよりリリースされた。

ポスト・クラシカルの数々の名盤に名を連ねるに十分値する佳作と言えるだろう。

彼女は6歳でバイオリンを始め音楽生活をスタートし、正統派クラシック音楽を学びつつペダルエフェクトやループメロディーの実験にも没頭していたようだ。

大学では作曲と録音技術を専攻、本格的に音楽家への道に進む事を決断した模様。

アンビエントやミニマル・ミュージックにも造詣が深く、それらの音楽のエッセンスも大いに作品に反映されている。

幾つかのインストゥルメンタル作も挟みつつ、英語と自身の母国語の仏語の歌唱を披露しており、本当に美しい。

冬の冷たい空気のなかで聴くのにうってつけの作品のように思える。