2026年4月28日火曜日

意図

 



【今週の一枚】














Ego Ella May - Good Intentions [Believe UK 2026]

ナイジェリア系英国人シンガーEgo Ella Mayによる新作。

これまで3枚のフル・レングスを発表してきた彼女だが、今作が正規のセカンド・アルバムと捉えているようだ。

活況を呈するサウス・ロンドンのシーンにあって、数多のミュージシャンが鎬を削っているワケだけれど、彼女の存在感は刮目に値するといえるのではなかろうか。

19歳にして独学でギターを習得し始め、ビートメイクも自ら手掛けて音楽制作をするようになった後、倫敦のICPM(The Institute of Contemporary Music Performance)に進学して本格的に学ぶに至った模様。

最初のEP「The Tree」をリリースしたのが2013年との事で既に十数年のキャリアを誇るアーティストだ。

彼女の名前はジャズ界のレジェンドElla Jane Fitzgeraldにちなんで付けられたそうで、大のジャズ・ファンだという父親の影響で幼少の頃から聴き親しんでいたらしい。

Sarah VaughanやBillie Holiday、 Nina Simoneなど往年の先達へのレスペクトを抱きつつもYazmin LaceyやFatima、そしてMoonchildのAmber Navranといった同時代を生きるジャズ、ネオ・ソウルのSSW達へのシンパシーを表明する彼女のアティチュードにはとても好感が持てる。

至高のシルキー・ヴェルヴェット・ヴォイス、大いに堪能したい。









2026年4月21日火曜日

放心



















 【今週の一枚】














Cancer House - The Moth [Motion Ward 2026]

数々のポスト・ロック、インディー・ギター・バンドを輩出してきたイリノイ州シカゴからまた新たな才能が現れた。

90年代スロウコア隆盛期を彷彿とさせる音を鳴らすCancer HouseはKeeyan Haack、Lily Sharratt、Alex Furrh、Whitney Johnsonの4人のメンバーで編成されるバンドで、これまで2枚のシングルを発表しており、今作がデビュー・アルバムにあたるようだが、全6曲収録時間29分と短尺な作品であることからEPの括りで捉えられている向きもあるようだ。

リリースはLAのMotion Wardからで設立10年余りと新興レーベルでありながら数々のアンビエント、実験音楽の作品を世に問うている模様。

古くはRed House PaintersやGalaxie 500にGasterDel Sol、00年代以降もDusterやGrouperといった数々のバンドが素晴らしい作品を残してきたが、このCancer Houseもそれらのバンドの系譜に連なる逸材のように思える。

あたかも録音されていなかった架空のジャム・セッションのムードを醸成する事を目指した、と嘯く彼等だが、本当にスタジオのなかで放心した状態で聴いているかのような錯覚に陥ってしまう。






2026年4月13日月曜日

Vitality









 

【今週の一枚】














Robyn - Sexistential [Young 2026]

スウェーデンのモダン・ポップのスーパースターRobynによる8年ぶりの9thアルバム。

英国Youngレーベルへの移籍第一弾となった。

今作は2010年の彼女の代表作「Body Talk」三部作と呼応する内容となっており、あたかも速射砲のように繰り出されるポップ・チューンが目白押しだ。

1979年生まれで46歳になるという彼女だが、そのバイタリティは全く衰え知らずと言えるだろう。

タイトル・トラックの「Sexistential」は体外受精を経て妊娠10週目の状態でワンナイト・スタンドについてラップするという破天荒なパフォーマンスが繰り広げられているが、その完成度は半端ないと思える。

作品全体を通じてこのうえない高揚感に覆われており、フロアで聴いたらさぞかし盛り上がる事だろう。

彼女はデヴィッド・バーンと共にSaturday Night Liveの50周年を祝うパフォーマンスを披露したり、今をときめくチャーリーXCXとも共演を果たしたそうで、その精力的な活動ぶりに心躍らされる思いである。





2026年4月6日月曜日

Not

















 【今週の一枚】














Joshua Burnside - It's Not Going to be Okay [Nettwerk 2026]

北アイルランド出身で現在ベルファストを拠点に活動するJoshua Burnsideの新作アルバム。

昨年の「Teeth of Time」に続き2年連続でのリリースとなった。

オーセンティックなアイリッシュ民謡をベースにした硬派な音楽性は今作でも健在だ。

悲しみの感情が彼の音楽のモチベーションになっており、13歳の頃に作曲を始めたきっかけも悲しみの感情だったと語っている。

今回のアルバムの制作に入る前の2024年8月に長年の親友ディーン・ジェンドゥビが薬物の過剰摂取で亡くなるという痛ましい出来事があり、その経験を受けてレコーディングが始められ、2025年の秋に完成に漕ぎつけた模様。

収録された楽曲は痛み、苦しみ、そして死の避けられない運命について歌われており、そのシリアスな内容と裏腹にどこか牧歌的なムードに覆われたサウンドが印象的だ。

タイトル・トラックの「It's Not Going To Be Okay」は最後に書かれた楽曲で、アルバムのハイライトと言うべきトラックに仕上がっている。

装飾を削ぎ落したシンプル極まりないアレンジが彼の音楽の特徴と言えるが、今回の作品を制作する際にビル・キャラハン&スモッグの「 A River Ain't Too Much To Love」を愛聴していたそうで、その簡素でありながらも豊かな響きがある音楽に大いにインスパイアされたそう。