2025年3月31日月曜日

考古学















 【今週の一枚】













Claire days - I remember something [Contrejours 2025]

仏リヨンのシンガー・ソングライターClaire daysの3年ぶりとなる2ndアルバム。

前作に引き続きFinkことFin Greenallが全面的にバックアップ、共同プロデューサーに名を連ね、フォーク・ギターにラップスティール、ピアノを演奏している。

アーバン・コンテンポラリー・フォークに類される彼女の音楽だが、師匠的存在のFinkに加えてFeistやCat Powerといったフォーキッシュ・ソウルのアーティストに多大な影響を受けているようだ。

今作は昨年の春にArdècheのMadera Studioと彼女の自宅で昨年のレコーディングが行われ、Benoit Courribetがマスタリングを手掛けた模様。

英語詞の楽曲が主体で数曲仏語詞が導入されているが、個人的には全曲仏語詞で聴いてみたい気もする。

オフィシャル・ヴィデオに取り上げられているM2「Archeology」とM7「Transparent」のクオリティも素晴らしいがラスト2曲の「From 1 to 10」から「Over for me」が何とも言えない余韻を残してくれる作りでしみじみ味わい深い。

もっと注目されても良いと思うんだけど、驚くほどに日本のウェブ・メディアに露出していないのは少々残念な気がしてしまう。






2025年3月24日月曜日










 

【今週の一枚】













Daniel Ögren - Pine [Playground Music 2025]

スウェーデンのバンドDina ÖgonのギタリストDaniel Ögrenによるソロ・アルバム。

かつてはDaniel Johnstonの作品にも参加しており、北欧ジャズ・ファンクの奇才Sven Wunderとも共演している模様。

これまでの作品ではゲスト・ヴォーカルを迎えたりもしていたようだが、今作は完全なインストゥルメンタル作となっており、全編にわたって彼のギター・プレイを堪能出来る仕上がりで実に味わい深い。

70年代のフュージョンやAORからの影響が色濃いサウンドであるのは間違いないが、古臭さは全く感じさせず、見事に現代風にアップデートされている。

南米音楽にインスパイヤされている側面もありつつエキゾチックな印象も感じられて面白い。

佳曲揃いのアルバムのなかでもハイライトは「Rocks」で洒脱な曲調で始まりつつもクライマックスでDanielの轟音ギターが炸裂する様には聴くたびに圧倒されてしまう。

ギターを背負ってボートで洋上を航海する様を捉えたアートワークも実に素晴らしいと思える。







2025年3月17日月曜日

砂埃
















 【今週の一枚】













Western Skies Motel - Trails [Point Of Departure 2025]

デンマーク人アーティストRené Gonzalez Schelbeckによるインストゥルメンタル・プロジェクトWestern Skies Motelの4thアルバムはPoint Of Departure Recording Companyよりリリースされた。

前作「Settlers」は2016年に発表されているので実に9年ぶりの作品という事になる。

René自身がプロデュースを手掛け、コペンハーゲンのスタジオでJakob Høyerと共にレコーディングが行われた模様。

殆どの楽器をRenéが演奏しているが、Anohni and the Johnsons作品への参加でも名高いJulia Kentがチェロ、Jens heinがベース、Nils Gröndahlがヴァイオリン・ドローンを担当している。

砂漠のロード・ムービーなどと形容される彼の音楽だが、本当に聴いていて目の前に砂埃が立ち込めるかのような錯覚に陥ってしまう。

作品のハイライトはRenéの奏でるアコースティック・ギターの旋律が印象的な「Lullaby」や「Fountain」だが、ヘヴィな曲調の「All Is Gone」や「Black Desert」も非常に味わい深い。

デンマーク人の奏でる孤高のアメリカーナ、じっくりと堪能したい作品だ。








2025年3月10日月曜日

リベンジ












 【今週の一枚】














Banks - Off With Her Head [Her Name Is Banks 2025]

カリフォルニア州LA出身のアーティストBanksことJillian Rose Banksによる3年ぶりの5thアルバム。

2014年のデビュー作「Goddess」のリリースから10周年にあたる昨年、当時のミュージシャンやプロデューサー達が再集結し、今作の制作が進められた模様。

昨年末には「Goddess: Unplugged」と銘打たれた1stアルバムのアコースティック・バージョンのおさめたアルバムも出し、秋にはLA・NY・ロンドンで当時出演していた小さなヴェニューで再演ライブまで敢行したというのだから、相当思い入れが深い事が窺える。

さて今回のアルバム、先行シングルでラッパーのDoechiiをフィーチャーした「I Hate Your Ex-Girlfriend」にいきなりハートを鷲掴みにされてしまう。

8曲目の「Make It Up」では今をときめくSamphaをゲスト・ヴォーカルに迎え、感動的なデュエットを披露。

Lauryn HillやFiona Appleへの憧憬を公言し、活動初期にThe Weekndのサポート・アクトに抜擢された程にその才能への評価は高いのは間違いないが、その容姿やカリスマ性、サウンドの完成度の高さに比して、いまひとつ突き抜け切れてない印象がしてしまう。

もっと注目を集めても良い存在だと思うんだがなあ。

あ、キャンセルになった2017年の恵比寿リキッドルーム公演のリベンジ、そろそろお願いします。




2025年3月3日月曜日
















 【今週の一枚】













Jules Reidy - Ghost/Spirit [Thrill Jockey 2025]

Jules Reidyはベルリンを拠点に活動するアーティスト。

非常に多作な彼女、これまでBlack TruffleやShelter Pressなど様々なレーベルから作品をリリースしてきたが、今作は名門Thrill Jockeyより。

アコースティック・ギターを主軸においたエクスペリメンタルな音響ポストロック的なアプローチといえば奇才Kaki Kingが連想されるが、音楽のベクトルは異なっている。

ドローン・ミュージック的な印象も感じとれるが、スロウコアの系譜にも連なるサウンドだ。

アルバムはスタジオでコラボレーターが一堂に会してセッションを行うという形は採らず、ドラム、チェロ、ベースといったインストゥルメンツは別々に収録したものを音源に、Julesが再構築するというユニークなスタイルが採用されている。

アルバム・タイトルのGhost/Spiritはそれぞれ同名のトラックが収録されているが、作品のハイライトは8曲目の「Every Day There's a Sunrise」だと思う。

ギターを携えた自身のポートレイトをアートワークに採用しているが、その佇まいが途轍もなくクールに感じられる。






2025年2月25日火曜日

りぼん











 

【今週の一枚】













John Glacier - Like a Ribbon [Young 2025]

カリビアンのルーツを持ちロンドン北東のHackneyで育ったラッパーにしてプロデューサーJohn Glacierのデビュー・アルバム。

元々SoundCloudに音源をUPしていたのをFrank Ocean とのコラボレーターとしても名高い Vegynにその才能を見出され、彼の主宰するPLZ Make It Ruinsより作品を発表していた事もある彼女、今作がYoungレーベル移籍第一弾となった。

内省的なベッドルーム・ヒップホップとでも言うべきその独特のサウンドはなんとも中毒性が高いと言えるだろう。

音数は抑制的ではあるがドリーミーでサイケデリックなメランコリアを現出していて素晴らしい。

作品にはEartheaterやSamphaをフィーチャーした楽曲も収録されており、全11曲30分とやや短尺ながらも、実に濃密な音世界を堪能出来る。

これはなかなかの衝撃作と言えるのではないだろうか。







2025年2月17日月曜日

OK















 【今週の一枚】













Oklou - choke enough [True Panther Sounds 2025]

Oklouはパリ出身のプロデューサー、SSWの Marylou Maynielによるソロ・プロジェクトで今作がデビュー・アルバム。

自身に加えてCasey MQ、Danny L Harle、A. G. Cookといった面々がプロデューサーに名を連ねている。

これまで彼女はOneohtrix Point NeverやCaroline Polachekのサポート・アクトを務め、MuraMasaとコラボーレートした事もある模様。

今回の作品に先駆けて「For The Beasts」と「The Rite Of May」という2枚のEPをリリースし注目を集めた彼女、それから7年の歳月を経て待望のフル・レングスを発表した。

昨年傑作を出したBecky and the Birdsも然りで英語圏以外の出身でありながら全編英語詞で憂いを帯びたエレポップを展開しており、ワールドワイドを視野に活動する気概が感じ取れる。

underscoresをフィーチャーし、先行シングルになった「harvest sky」も素晴らしいが、なんといってもタイトル・トラックの「choke enough」のクオリティが突出しているように感じられた。

Oklouというネーミングは「オクロウ」と読んでしまいそうになるが、正しくは「OK、ルウ」だそう。