2020年6月30日火曜日

序の口



【今日の一枚】



Phoebe Bridgers - Punisher [Dead Oceans 2020]

コロナ禍のなかチケットを持っていて一番最初にキャンセルになったのが3月のThe NationalのZepp Diver City Tokyo公演で前座がPhoebe Bridgersという正に夢の競演だっただけに、それこそ痛恨の極みだったワケだけれど、そのPhoebeの3年ぶりの2ndアルバム。
その間も Julien BakerLucy Dacusと共に結成したBoygeniusConor OberstとのBetter Oblivion Community Centerとしての活動、去年の来日公演、そしてRyan Adamsに対するセクハラの告発に至るまで様々な話題を振りまいてくれており、全然久々な感じがしないというか。
それにしても期待通り過ぎる仕上がり、それもまだまだ伸びしろを感じさせてくれるというか、今後の活動のなかで歴史に残る傑作を生みだしてくれそうな予感さえしてしまう。
疾走感溢れるメロディが鮮烈な印象を与えてくれるM6「Chinese Satellite」から噛み締めるように歌われるM7「Moon Song」への流れも素晴らしいが、ラスト・トラック「I Know The End」の大団円にはそれこそカタルシスを感じさせられる。
インタビューなどを読むとユーモラスで聡明な彼女の側面が垣間見れて興味深いが、どこかすっ呆けた佇まいとクールな作風の落差がなんともイケている。


2020年6月22日月曜日

ハートに火をつけて



【今日の一枚】



Perfume Genius - Set My Heart On Fire Immediately [Matador Records 2020]

Perfume GeniusはMichael Alden Hadreasのステージ・ネームで今回が5作目のアルバム。
2010年のデビュー・アルバム以来、ほぼ2年おきのペースで作品を世に問うている。
前作「No Shape」でも「Wreath」のようなメロディが際立つトラックが印象的だったけど、今作は前作にも増して粒揃いの楽曲が並んでいる印象。
M3「Without You」やM6「On the Floor」なんかを聴いていると彼はMarc Bolanの生まれ変わりなんでは、なんて思わされた。
前作に引き続きBlake Millsがプロデューサーを務めており、新作をリリースしたばかりのPhoebe Bridgersがバッキング・ヴォーカルで参加している模様。


2020年6月15日月曜日

応援



【今日の一枚】



Owen Pallett - Island [Domino 2020]

数多の大物アーティストの作品のアレンジ・ワークで知られるカナダのOwen Pallett、自身名義の3作目の作品は前作『In Conflict』から6年振りのリリース。
壮大なオーケストレーション・サウンドとリリカルなアコースティック・ギターのフィンガー・ピッキングの調べが交錯するシンフォニック・ポップ。
全編生音で構成されているようでストリングスはTHE LONDON CONTEMPORARY ORCHESTRAによる演奏で、Abbey Road Studioで録音された模様。
先行してリリースされた↓の「A Bloody Morning」の動画はパンデミック禍の人々の隔離された暮らしにインスパイアされたかなり凝った作りとなっている。
映画音楽のスコアを手掛ける事でも知られる彼、今後とも各方面から引っ張りだこで多忙だろうけど、ソロの活動にも大いに期待したい。


2020年6月8日月曜日

ゆらぎ



【今日の一枚】



Endless Melancholy - A Perception Of Everything [Sound in Silence 2020]

ウクライナのキエフを拠点に活動するOleksiy Sakevychのソロ・プロジェクトEndless Melancholyによる7枚目の作品。
自身が主催するHidden Vibesを始め様々なレーベルから作品を発表してきた彼、今回はギリシャのSound In Silenceからリリース。
自らの作品をリリースする傍ら様々なアーティストとのコラボレーションにも積極的で実に旺盛な活動ぶりで頼もしい限り。
今作においてもその独特な「旋律の揺らぎ」は健在で、その孤高の音世界に心底魅了されてしまった。


2020年6月1日月曜日

若き匠



【今日の一枚】



Blake Mills - Mutable Set [Verve 2020]

数々のプロデュース・ワークで名高いLAのマルチ・インストゥルメンタリストによる4枚目のアルバム。
さらっと聴く分には茫洋とした印象を受けそうになりつつも聴きこんでいくにつけ音の陰影がじわじわと浮かび上がってくるような作りは流石というか中毒性が高い。
音の表層は違えど今は半ば仙人と化してしまったRed House Paintersの頃のMarak Kozelekとか鬼籍に入ってしまったSongs : OhioことJason Molinaが持っていた感触に近しいものを感じる、というのは的外れだろうか。
佇まいからして貫禄と言うか風格を感じるけど1986年生れというからまだ30代半ばなんですな。