2020年12月25日金曜日

今年の十枚

 













Moses Boyd - Dark Matter  [Exodus Records]

This Is The Kit - Off Off On [Rough Trade]

Joshua Burnside - Into the Depths of Hell [Joshua Burnside Recordings]

Waxahatchee - Saint Cloud [Merge]

Duval Timothy - Help [Decca Publishing] 

Jónsi - Shiver [Krunk]

Purnamasi Yogamaya - Oh My Beloved [Purnamasi Yogamaya]

MURA MASA - R.Y.C [Polydor 2020]

Ólafur Arnalds - Some Kind of Peace [Mercury]

Oneohtrix Point Never - Magic Oneohtrix Point Never [Warp]

Selection 2020

2020年12月21日月曜日

大成功




 





【今日の一枚】









Waxahatchee - Saint Cloud [Merge 2000]

Katie CrutchfieldによるプロジェクトWaxahatcheeの2年半ぶりとなる5thアルバム。

今作に先立つ形で2018年にEP「Great Thunder」がリリースされているが、これは過去に書き溜めていた曲を改めて弾き語りでレコーディングしたもののようだ。

今回の「Saint Cloud」はBrad Cookをプロデューサーに迎え、ツアーも共にしたことのあるテキサスのBonny Doonのメンバーをバックに演奏した楽曲が収録されているが、かなりアメリカーナなサウンドに寄せた形となっている。

本人もLucinda Williamsの影響が大きかったと語っているようだが、今回のアプローチは大成功だったのではないだろうか。

パートナーのKevin Morbyも少なからず貢献していると思われるも、彼はここ数作不振が続いているので奮起を期待したいトコロ。







2020年12月14日月曜日

バリバリ










【今日の一枚】









Cornershop - England Is A Garden [Ample Play Records 2020]


今年はRentalsの復活作にも驚かされたけれど、このCornershopの新作にも大概驚かされた。

最後にまともに聴いたのは2011年の「Cornershop and the Double 'O' Groove Of」で、その後の消息を全然把握してなかったのが、調べてみるとフル・アルバムを2枚リリース、その間にも数種のEPを出したり、と活動は続けていた模様。

「Brimful of Asha」のスマッシュ・ヒットから早23年、もうそんなになるのか、と感慨深いが、今作に漲るポジティブなエナジーに心底圧倒された。

こりゃ過去のバンドでもなんでもなくて現役バリバリですよ。

T-Rexやストーンズ、プライマル・スクリームあたりの名前が去来するようなナンバーM3「No Rock Save in Roll」を聴くたんびに、元気を貰ったような気になります。






2020年12月7日月曜日

極上




 





【今日の一枚】









Jónsi - Shiver [Krunk 2020]

Sigur RósのフロントマンJónsiによる10年振りとなる2ndソロ・アルバム。

今作における最大のトピックは何と言ってもCocteau TwinsElizabeth Fraserの客演だろう。

M3「Cannibal」でゲスト・ヴォーカルとして参加しているが、往年のファンの期待を全く裏切る事のない美声を聴かせてくれている。

また、M7「Salt Licorice」でメイン・ヴォーカルを務めるのはRobyn

このヒトはRöyksoppThe Inevitable Endなんかもそうだけど、自分のソロより客演の方が良い仕事をしているような。

いずれにしてもアルバムのトータル・クオリティも極上と言える今作、Charli XCXとのコラボで知られるA.G. CookとJónsiの共同プロデュースで作り上げられた模様。









2020年11月30日月曜日

ひしひし




 





【今日の一枚】









Moses Boyd - Dark Matter  [Exodus Records 2020]


活況を呈す新世代UKジャズ・シーンにおいて最重要人物の一人と目されるMoses Boyd

ドラマーとして数々の作品に参加、プロデューサーとしても活躍する彼だが、自身の名を冠した作品は今作が初めてとの事。

Nubya GarciaGary Crosbyをはじめとした数多くのゲスト・ミュージシャンを迎えて制作された本作、ホーン・セクションが前面に打ち出された序盤からエレクトリック・ギターにフォーカスを当てた「Y.O.Y.O」に繋がっていきPoppy AjudhaObongjayarのスタイルの違う二人のヴォーカル曲が並んだのちにJoe Armon-Jonesのピアノをフィーチャーした「2 Far Gone」を挟んで終盤に向かってクラブ色の強いサウンドが展開されていくのだが、その構成力は実に見事だと思う。

アルバムの随所で目を見張るべきドラム・プレイが展開されているが、と同時にプログラミングも大胆に導入されている。

サウス・ロンドンのコンテンポラリー・ジャズ・シーンの隆盛ぶりをひしひしと実感できる充実作だと思う。








2020年11月24日火曜日

働き者


 







【今日の一枚】










Bill Callahan - Gold Record [Drag City 2020]

Bill Callahan名義では6作目、SMOGの時代も含めるとなんと18作目にあたるというニュー・アルバム。

全20曲収録、1時間を超える大作だった昨年の「Shepherd in a Sheepskin Vest」に比べると今作は10曲で40分足らずとコンパクトな仕上がり。

リラックスしたムードを醸し出しつつも濃密なサウンドは彼の持ち味と言えるだろうが、その部分は今作においても健在。

まんまタイトルが「Ry Cooder」という楽曲が収録されていたり、オープニングの「Pigeons」の冒頭から激渋バリトン・ヴォイスで「Hello, I’m Johnny Cash」と呟き、「Sincerely, L. Cohen」で締める、なんて粋な趣向も。








2020年11月16日月曜日

お手本







【今日の一枚】 





Ólafur Arnalds - Some Kind of Peace [Mercury 2020]

アイスランドのオーラヴル・アルナルズ、傑作「Re:member」に続く2年振りの5thアルバム。

駄作が無い、というか常にハイレベルの作品を提示してくれる彼だが、今作もポスト・クラシカル、クラシック・クロスオーバーのお手本のような作品に仕上がっている。

オープニング・トラックはBonoboとのコラボレーションで去年二人で書いたものを今年リモート作業で完成させたそう。

同郷のSSW、JFDRをゲスト・ヴォーカルに迎えたM5「Back To The Sky」、ドイツ人シンガーJosinをフィーチャーしたM8「The Bottom Line」それぞれに感動的な佳曲で作品の良いアクセントになっている。

従妹のÓlöf Arnaldsもそろそろ新作を出してくれんかなあ。










2020年11月9日月曜日

多大










 【今日の一枚】










This Is The Kit - Off Off On [Rough Trade 2020]


KateStables率いるThis Is The Kit、3年振りの5thアルバムは前作に引き続き、英Rough Tradeより。

英国出身でありながらフランス在住で、トレードマークはバンジョーというボヘミアンな彼女、これまでも高い評価を受けてきたなかにあって、今作で一皮むけた印象。

洗練、という言い方をすると一歩間違えたら退屈になってしまいがちではあるが、単にサウンドの幅が広がっただけではなく、コアの部分は不変でありながら強靭かつしなやかな音作りに成功していると思う。

プロデュースはJosh Kaufmanが務め、英国南西部WiltshireのReal World Studiosでレコーディングされた模様。

インタビューでAni Difrancoに多大な影響を受けた、と発言しているのを目にし、なんだか嬉しくなってしまった。









2020年11月2日月曜日

歌と器

 









【今日の一枚】












Adrianne Lenker - Songs and Instrumentals [4AD 2020]


昨年2枚のアルバムをリリースし好評を博したBig Thiefの紅一点Adrianne Lenkerがソロとしてウタモノとインスト作の2作を同時にリリース。

それぞれ独立した作品であるが、プレイリストで繋げて聴いても違和感無く浸れた。

USインディー界において確固たる地位を築いていると言って過言ではないBig Thiefであるが、彼女の創作意欲はバンドの枠に収まりきる事無く、今回のダブル・アルバムに結実している。

彼女と比較されるフィメイルSSWは少なくないだろうけど個人的にはRed House Painters時代からソロ初期のMark Kozelekなんかに近しい雰囲気を感じる。







2020年10月26日月曜日

ジャケ買いしません

 









【今日の一枚】

Jerry Paper - Abracadabra [Stones Throw 2020]

LAとNYを股にかけて活動するマルチ・プレイヤーLucas Nahanのプロジェクト、Jerry Paperの6thアルバム。

前作からStones Throwレーベルに移籍、今作も同レーベルからのリリースとなった。

13曲収録ながらトータル30分超とコンパクトにまとめているが、内容は実に多彩。

音の作りは実にオーセンティックなソフト・ロックで確かな技術に裏打ちされているのだが、アートワークから想像できるようにどこかすっ呆けている。

バリトン・ヴォイスのヴォーカルもとても魅力的で、かつメロディ・メーカーとしても大層な才能だと思える。








2020年10月19日月曜日

混沌


 






【今日の一枚】






Sufjan Stevens - The Ascension [Asthmatic Kitty 2020]


Sufjan Stevensの5年半ぶりとなる8thアルバム。

全15曲収録、トータル80分超の大作だ。

先行リリースされたラスト・トラックの「America」が12分オーヴァーの作品だったのも驚きだったが、ダブル・アルバム並みのヴォリュームである。

シンプルなフォーク作だった前作と打って変わって今回はかなり電子寄り。

ただ、サウンドの質感は違えど彼独特のマイナー・コードの旋律が全編にわたって展開されており、メランコリックな音世界を堪能出来る。

多少混乱気味でとっちらかった印象も否めない作品だが、逆にそこが魅力的とも言えるのではないだろうか。









2020年10月12日月曜日

匹敵
















【今日の一枚】

             








Joshua Burnside - Into the Depths of Hell [Joshua Burnside Recordings 2020]

北アイルランド、ベルファストのフォーク・シンガーJoshua Burnsideの2ndアルバム。
殆ど前情報無しに接したこの作品、Ryley Walkerの2015年の2nd「Primrose Green」に匹敵する衝撃を受けてしまった。
アイルランドのルーツ・ミュージックやゴシック・アメリカーナの影響色濃いサウンドだがエキスぺリメンタルな側面も感じさせ、独自のスタイルを確立している印象。
そして何と言っても彼自身の「声」がイイ。
オープニング・トラックの「I Saw the Night」でいきなりハートを鷲掴みされてしまった。

2020年10月5日月曜日

星の









【今日の一枚】







Lomelda - Hanna [Double Double Whammy 2020]


LomeldaはTexas州Silsbee出身のHannah Readのステージ・ネームで今作が5作目の作品。

リリースはブルックリンのDouble Double Whammyより。

典型的とも言えそうなロー・ファイ・インディーのスタイルはレーベル・メイトのFLORISTあたりとも相通じるものも。

大傑作「Désormais」と「Heart and Crime」をリリースした後のJulie Doironが目指そうとして到達し得なかった境地に辿り着いた音、とまで言ってしまっては大袈裟だろうか。

HannahによるとLomeldaとは「星のエコー」を意味する造語なのだとか。





2020年9月28日月曜日

カンマ














【今日の一枚】

 










The Sea and CakeのSam Prekopによる5年振りの5thソロ作品。
アナログ・モジュラー・シンセとデジタル・シンセを駆使したインスト・アルバム。
ヴォーカルレスでありながらも詩情に溢れた仕上りとなっている。
ビート・プログラミングも実に大胆に取り入れられており、独特な躍動感が感じられる。
ミキシングはJohn McEntireが手掛け、マスタリングは12kレーベルの主宰者Taylor Deupreeが担当している。
アートワークの写真は自身が撮影したものだそう。




2020年9月24日木曜日

オオキナオセワ

 







【今日の一枚】






Kelly Lee Owens - Inner Song [Smalltown Supersound 2020]

ウェールズ出身、元看護士から転身したという異色の経歴の持ち主のテクノ・プロデューサーKelly Lee Owensの3年振りの2ndアルバム。

Radioheadが2007年作「Weird Fishes/Arpeggi」のカヴァー「Arpeggi」で幕を開ける本作、全10曲収録時間50分の作品だ。

これまでもJon HopkinsやJenny Hvalとのコラボで話題を呼んできた彼女、今作においては元The Velvet UndergroundのJohn Caleをゲスト・ヴォーカルに迎えている。

全編を通じ緊迫感あるサウンドが展開されているが、惜しむらくは彼女自身のヴォーカルが少々インパクト不足な部分。

先行シングルとしてリリースされた「Melt!」や「Jeanette」のスリリングなサウンドを聴くにつけ、自身の歌は控えめにインスト増やすか、複数のゲスト・ヴォーカルを迎えた方がもっと良い結果に繋がったのでは、なんて大きなお世話な感想を持った次第。










2020年9月14日月曜日

旺盛

【今日の一枚】










Land of Talk - Indistinct Conversations [Saddle Creek 2020] Elizabeth Powellが率いるカナダのLand of Talkによる3年振りの4thアルバム。 2作目から3作目のインターバルが7年有った事を思うと思いのほか早いリリースだし、来年にももう一枚作品が予定されているというから旺盛な活動ぶりだと言えるだろう。 所属レーベルは変わらずSaddle Creekで、看板的存在と言うほどでは無いにしても、レーベルのイメージにとてもフィットしたバンドだと思う。 個人的にはカナダはウタに強みがあるバンドが多いイメージがあるが、彼女達も紛れもなくその一つだ。 曲単位で言うとアンニュイな疾走感とでもいうべき感覚が味わえるM4「Weight of That Weekend」からマイナー・コードのメランコリック・メロディが鮮烈なM5「Love in 2 Stages」あたりが特に印象的だった。

2020年9月7日月曜日

大文字

【今日の一枚】
Nick Hakim - WILL THIS MAKE ME GOOD [ATO Records 2020] ワシントンDC出身で現在はブルックリンを拠点に活動するSSWにしてマルチ・インストゥルメンタリストの2ndアルバム。 一言で表現するとしたらサイケデリックR&Bといったトコロだけど、なんとも一筋縄ではいかないサウンド・メイキング。 チェット・ベイカーなんかが引き合いに出されるというウィスパリング・ヴォイスも突如絶叫に変わったり、と目まぐるしい。 ヴォイス・エフェクトやリバーブを深めにかけたサウンド・プロダクションには相当拘りを持っているようだ。 チリとペルー出身のの両親に育てられたたおかげか、南米フォークローレにも多大に影響を受けているようでM6「ALL THESE INSTRUMENTS」なんかが顕著にそれを感じ取れる。 変幻自在なリズム・ワークも彼の音楽を特徴付けているけれど、なかでもヘヴィでドープなM7「DRUM THING」に大いに感銘を受けた。 ちなみに彼はボストンのバークリー音楽大学の出身で未だに奨学金の返済を続けているそう。

2020年8月31日月曜日

自由都市

【今日の一枚】
Duval Timothy - Help [Decca Publishing 2020] 

サウス・ロンドンとシエラレオネのフリータウンを股にかけて活躍するピアニストにしてサウンド・アーティストによる4枚目のアルバム。
前作収録曲「No」がSolangeの最新作でサンプリングされた事でも知られる。
オーセンティックなピアノのサウンドを主体としつつも、その音作りは非常に自由奔放なスタイルで、曲毎に様々な表情を見せる。
Twin Shadow、Lil Silva、Vegyn、Mr. Mitchといった多彩なゲスト・ヴォーカリストも見事な客演ぶり。
作品を覆う、そこはかとないモンドなテイストも味わい深い。
先行シングルとなった「Slave」はPharrell Williamsのインタヴューをスポークン・ワードに採用、PVの凝った映像も相まって強烈な印象を与えてくれる。








2020年8月24日月曜日

Trilogy

 


【今日の一枚】






Son Lux - Tomorrows I [City Slang 2020]

Son LuxはLAのコンポーザーRyan Lottによるソロ・プロジェクトとして活動を開始し、現在はギタリストのRafiq Bhatia、ドラマーのIan Changが正式メンバーとして加わり、3人組として活動している。

今回の作品は2年振りの新作だが、今後1年がかりでリリースされる三部作の第一部であり最終的に3つの作品をまとめたものが来年フィジカルで発売される予定なのだとか。

Kadhja Bonetをゲスト・ヴォーカルに迎えた先行シングル「Plans We Made」をはじめとして緊迫感に満ちつつ濃密極まりない音空間を現出させたトラックが並ぶ。

個人的には「Honesty」に最も強く感銘を受けた。

崇高な印象のストリングス・インスト「Involution」がラストを飾る趣向もなんとも粋だ。

今作に連なる2作目・3作目のリリースが実に楽しみである。







2020年8月18日火曜日

夏娘達



【今日の一枚】





LAの3人姉妹バンドHAIMの3rdアルバム。
Lou Reed御大の名曲「ワイルドサイドを歩け」にインスパイアされたトラック「Summer Girl」が昨夏リリースされ話題を呼んだのを皮切りに着々と先行シングルをリリース、コロナ禍をものともせぬかのようにフル・アルバムの発表に漕ぎ着けた。
アートワークは映画監督Paul Thomas Andersonによって撮影されたそうで、シングルのPVの撮影も全て手掛けており、蜜月ぶりをうかがわせる。
プロデュースはDanielle Haim本人とRostam BatmanglijAriel Rechtshaidによって為されたようだ。
うだるような暑さが続く真夏の日が続くが、彼女たちの颯爽としたサウンドに浸りつつ過ごすのも悪くない。




2020年8月12日水曜日

超雄達



【今日の一枚】




Jamie IrrepressibleことJamie McDermott率いるThe Irrepressiblesの8年ぶりとなる3rdアルバム。Röyksoppの「The Inevitable End」における客演でも話題を呼んだ彼、とりわけ「Something in My Heart」については個人的には2010年代を代表する名曲のひとつだと思っている。
今作については2018年5月に「Submission」をリリースしたのを皮切りに4枚の先行シングルを発表したのちに満を持してアルバム発売に漕ぎつけた模様。
オープニング・トラックの「Anxiety」のイントロを聴くなり頬元が緩んでしまいそうになるが、全編遺憾なくJamie節が展開されている印象。
なかでもハイライトは2ndシングル「Dominance」。
センスの塊のような変態ディスコ・ミュージックではあるまいか。

2020年8月3日月曜日

無関心



【今日の一枚】



Fiona Apple - Fetch the Bolt Cutters [Epic 2020]

今年の4月に突如リリースされたフィオナ・アップルの8年ぶりの5thアルバム。
17歳での衝撃のデビューからかれこれ25年近く、寡作で知られる彼女だが、シーンから熱狂的な支持を受ける結果となった。
辛口で知られるレビュー・サイトが10点満点をつけた、とか各サイトの今年上半期のベスト・アルバムに軒並み選出、とかいうエピソードに枚挙に暇がない程だ。
しかし決してとっつき易い音とは言えないと思うし、ここまで手放しで絶賛されているのは少々違和感も。
ストイックなサウンド・アレンジやレアな感情を剥き出しにしたヴォーカル・スタイルはNirvanaの「In Utero」や彼女が敬愛してやまないというJohn Lennonの「ジョンの魂」なんかを想起させられたりもした。
メジャー所属のアーティストには珍しく、PVは一切制作しておらず、プロモーションやセールスには一切関心がないのだろうと想像されるけど、それでこの反響というのは何だか皮肉な感じもしてしまう。

2020年7月27日月曜日

現役感



【今日の一枚】



The Rentals - Q36 [The Rentals 2020]

もしかしたらコレが今年一番の衝撃、になるかも。
元々Weezerには今一つピンと来なかったワタクシもMatt SharpのThe Rentalsはスキで1st2ndともに当時愛聴したモノだ。
ただその後の消息は杳として知れず、てっきり解散しているものと思い込んでおったところに今作のリリースの報が。
バンドは形を変えつつも活動を続けており、なんと6年前にも3rdアルバムPolyvinylから発表していた模様。
というワケで4枚目のフル・アルバムとなる今作、全曲Mattの書下ろしのセルフ・プロデュース、ギタリストにYeah Yeah YeahsNick Zinner、ドラムスにThe KillersRonnie Vannucci Jr.をメンバーに迎えてレコーディングされたそう。
十数年ぶりに接するThe Rentalsのサウンドだが、これが驚く程に現役感バリバリ。
えてして良作とはそういうモノかも知れないが、一時間超の大作の割に全く間延びせず、メロディも力強くMattのヴォーカルも変幻自在ともいうべきスタイルでとにかく聴かせる。
やけに音質も良いよなあ、なんて聴き進めていたら、クレジットにMixing EngineerとしてDave Fridmannの名前が!


2020年7月20日月曜日

浪漫男子



【今日の一枚】



Rufus Wainwright - Unfollow The Rules [BMG 2020]

ルーファス・ウェインライトはカナダ人のイメージが強いけど、実際にはアメリカ生まれカナダ育ちで二重国籍なのだとか。
そんな彼も1998年のアルバム・デビュー以来二十数年のキャリアを誇り、今週誕生日を迎え47歳になるそうだ。
デビュー当時からゲイを公言していたルーファス、なんと故レナード・コーエン翁の娘さんに代理母を依頼し生まれた娘さんをドイツ人のパートナーと一緒に育てているというのだから吃驚。
しかし父ちゃんがルーファス・ウェインライトで爺ちゃんがレナード・コーエンって凄すぎる…。
9作目にあたる今作はプロデューサーにミッチェル・フルームを迎え、レコーディングには今年素晴らしい作品を発表したBlake Millsも参加。
自身を体現したかのようなタイトルの「Romantical Man」や悲壮感漂う壮大なアレンジが印象的な「Early Morning Madness」など聴きドコロ満載のうえ、何よりも彼自身の「声」が本当によく出ていて全く衰えを感じさせない。
今年のフジ・ロックにも来日予定だったそうで、いつかコンサート・ホールで彼の声を堪能してみたいものである。




2020年7月13日月曜日



【今日の一枚】



Ron Sexsmith - Hermitage [Cooking Vinyl 2020]

今年はロン・セクスミスのメジャー・デビュー作「Ron Sexsmith」がリリースされて25年になるそうだ。
そんな節目と言うべきタイミングで発表された今作、25年で13枚目の作品にあたる模様。
ずっと追いかけてきていたつもりが、実は前作・前々作は出ていたのにも気が付いていなかったという体たらく。
オンタリオ州ストラトフォードに拠点を移し、盟友的存在のドラマーDon Kerrをプロデューサーに迎え、ドラム以外の楽器は全てロン自身が演奏し制作が進められたのだとか。
全16曲で収録時間が47分という事で1曲あたり3分くらいの楽曲が並ぶが、聴き進めるにつけ、このヒトは本当にオーセンティックなアプローチと平易な言葉遣いで「グッド・メロディ」を愚直なまでに追及し続けているんだなあ、と改めて痛感させられた。
そのアティチュードはデビュー以来一貫されてるんだろうけれども。



2020年7月6日月曜日

才媛



【今日の一枚】



Gordi - Our Two Skins [Jagjaguwar 2020]

2017年のデビュー作が鮮烈だったGordiことSophie Payten、3年ぶりの2ndアルバム。
前作に引き続き今回の作品もJagjaguwarよりリリースされ、レーベルメイトのBon Iverとは音作りにステージに、と協演関係にある事でも知られる。
今作は彼女の故郷であるCanowindraのコテージのスタジオにて友人のChris MessinaとZach Hansonを迎え制作が進められた模様。
3年のインターバルの間の2018年にニューサウスウェールズ大学で医学士の学位を取得し、2019年を通じてプリンスオブウェールズ病院で医師として勤務しつつ、今年の一月には地元豪州の大規模な森林火災の被災地域への寄付のためのシングル「The Cost (Australian Bushfire Relief)」をリリースしたというのだから、天は二物を与えず、とはいうものの、本当に見上げた才媛だ。