2022年12月29日木曜日

Selection 2022



01.slomo - Mura Masa [demon time]

02.光るとき - 羊文学 [our hope]

03.Movie - Natalie Evans [Movements]

04.venus fly trap - brakence [hypochondriac]

05.unsaid - Tomberlin [i don’t know who needs to hear this...]

06.Happen - Nick Hakim [Cometa]

07.The Crack Where the Light Gets In - Marisa Anderson [Still, Here]

08.Immunity - Alex G [God Save the Animals]

09.Nervous System Breakdown - Babebee [Mind Over Matter]

10.Radiator - Sadurn [Radiator]

11.Link Up - Awich [Queendom]

12.Claire You Don't Want to Be Saved - Claire days [Emotional Territory]

13.Words Left Unspoken - Jasmine Myra [Horizons]

14.See you Soon - Beabadoobee [Beatopia]

15.Window Somewhere - Skullcrusher [Quiet the Room]

16.East Detroit - Samm Henshaw [Untidy Soul]

17.Walkin - Denzel Curry [Melt My Eyez See Your Future]

18.Coyotes - Bill Callahan [YTI⅃AƎЯ]

19.last july - SOAK [If I never know you like this again]

20.The Only Thing - Maria BC [Hyaline]

21.Break Me Open - S. Carey [Break Me Open]

22.You - ginla [Everything]

22.Holding Back - Banks [Serpentina]

23.灯火 - 優河 [言葉のない夜に]

24.LA FAMA - ROSALÍA [MOTOMAMI]

25.the dealer - Nilüfer Yanya [PAINLESS]

26.Little Things - Big Thief [Dragon New Warm Mountain I Believe In You]

27.Lucifer On the Sofa - Spoon [Lucifer On the Sofa]

28.Jordan - Jana Horn [Optimism]

29.Age of Phase - Bonobo [Fragments]

30.Heaven - Grace Cummings [Storm Queen]



今年の十枚

 













Brakence - Hypochondriac [Columbia Records]

Nick Hakim - Cometa [ATO]

Silvana Estrada - Marchita [Glassnote]

beabadoobee - Beatopia [Dirty Hit]

Denzel Curry - Melt My Eyez See Your Future [Loma Vista]

Perfume Genius - Ugly Season [Matador]

Tomberlin - i don’t know who needs to hear this​.​.​. [Saddle Creek]

Awich - Queendom [Universal]

Bonobo - Fragments [Ninja Tune]

Big Thief - Dragon New Warm Mountain I Believe in You [4AD]


2022年12月26日月曜日

ブコツ

 













【今週の一枚】













Claire Days - Emotional Territory [Claire days 2022]

仏リヨンのフィメイルSSW、Claire Daysのデビュー・アルバム。

FinkやFeist、Cat Powerといったフォーク・ソウル・アーティスト達にインスパイアされたようで、なかでも敬愛するFink ことFin Greenallは今作を共同プロデュースし、演奏にも参加している。

きらびやかさとは無縁な、武骨といっても良い硬派インディー・エモ・フォークだが、しみじみとウタの良さが実感できる好盤だ。

彼女の存在を知ったのはFinkのSNS投稿で見たのがきっかけだが、殆ど話題になってないのが不思議なくらいだ。

セルフ・リリースというのもあってか、露出が少ないのかもしれないけれど、これはなかなかの逸材ではないだろうか。






2022年12月19日月曜日

咆哮



















 【今週の一枚】













Brakence - Hypochondriac [Columbia Records 2022]

もうかれこれ20年余り駄ブログを書いてきたけど、SNSの時代になってから日々の徒然やゴルフ・ネタはそちらに移行し、ほぼ音楽ネタのみになって、ここ数年は週に一度「今週の一枚」で音源を紹介するスタイルになっている。

前身のブログの時代から年末にその年の10枚とCD-R一枚分くらいのプレイリストを作っており、今年もそろそろやろうと思っているのだけど、もし「今年の一枚」という形で一枚だけ上げるとしたら間違いなくこのBrakenceのアルバム「Hypochondriac」だ。

BrakenceはOhio州Columbus出身の弱冠21歳の青年Randy Findellによるソロ・ユニット。

SoundCloud上に音源をUPし始めたのが2016年だったというから当時まだ15歳だったワケで、その早熟ぶりに驚かされるが、その才能は早くから注目を集めていたようだ。

ハイパー・ポップの括りで紹介されている事が多いようだが、Emo RapやGlitch Pop等とも形容されている。

トラック・メイカーとしても凄まじいポテンシャルを有しているうえにボーカリストとしても突出した才能の持ち主だと思う。

こんなにもエネルギッシュで美しい咆哮は滅多に聴く事が出来ないのではないだろうか。








2022年12月12日月曜日

愛!














 【今週の一枚】













Lucrecia Dalt - ¡Ay! [RVNG Intl. 2022]

コロンビア出身で現在は伯林を拠点に活動するアーティストの2年ぶりの8thアルバム。

ボレロやマンボ、メレンゲ、サルサといった彼女が幼少期に影響を受けた民族音楽を咀嚼し、実験的な現代音楽に昇華させている。

彼女は以前「4 Women No Cry Vol. 3」というコンピレーション・アルバムに参加しているが、残りの3人のアーティストのなかにJulia Holterの名前が。

音楽性は違えど二人の精神性に近しいものを感じた次第。







2022年12月5日月曜日

逆さ











 

【今週の一枚】













Bill Callahan - YTI​⅃​A​Ǝ​Я [Drag City 2022]

テキサス州オースティンの吟遊詩人Bill Callahanの新作アルバム。

コロナ禍をものともせず、という事はないのだろうけど、昨年もBonnie "Prince" Billyと共作アルバムをリリースしており、2019年から毎年作品を発表するという旺盛至極な活動振り。

2020年の「Gold Record」は40分足らずと比較的コンパクトな作品だったが、今作は曲数は12曲でありつつも収録時間が一時間超え、ヴァイナルは二枚組という大作となった。

毎度の事ながら内容は濃密そのもので、全くと言って良い程に中だるみを感じさせない。

地味渋アレンジのトラックが並んでいるものの、曲毎に様々な趣向が凝らされている。

若い頃から超低音ヴォイスが持ち味の彼、こうなってくると逆に年を取らない印象だ。

ベースにEmmett Kelly、ギターにMatt Kinsey、ドラムがJim White、鍵盤はSarah Ann Phillipsといった面々がバックを支えているが、その他にも多くのゲスト陣が参加。

タイトルはREALITYを逆さに表記したものだが、何か深い意味があるのだろうか。





2022年11月28日月曜日

哀しみ











 

【今週の一枚】













Loyle Carner - Hugo [AMF Records 2022]

サウス・ロンドンのラッパーLoyle CanerことBenjamin Gerard Coyle-Larnerによる3年振りの3rdアルバム。

サッド・ホップという言葉を知ったのはArms and Sleepersの2017年作「Life Is Everywhere」を通じてだったが、このLoyle Canerの音楽も正にそんな呼称がぴったりくるような、実に内省的で繊細なものである。

冒頭を飾るリード・シングル「Hate」は攻撃的でありながらもどこか切なさも感じさせるし、それに続く「Nobody Knows」の壮大なコーラスは崇高さすら醸し出している。

本作には盟友的存在のJordan RakeiやAlfa Mistが参加、Madlib、kwes.等がプロデューサーを務めている。







2022年11月21日月曜日

物騒














 【今週の一枚】












Skullcrusher - Quiet the Room [Secretly Canadian 2022]

頭蓋骨割り、とはなんとも物騒でおどろおどろしいネーミングだが、NY出身でLAを拠点に活動するフィメイルSSW、Helen Ballentineのソロ・ユニット。

眉目秀麗で可憐極まりない容貌の彼女、その奏でる音楽も実に繊細で美しい。

Big ThiefやBon Iver関連で名高いAndrew Sarloをプロデューサーに迎え、Noah Weinmanがコラボレーターとなって制作されたデビュー・アルバム。

Secretly Canadianレーベルの看板のひとつに成り得るポテンシャルを秘めているように思えた。

リード・シングル 「Whatever Fits Together」やタイトル・トラック「Quiet The Room」も良いが、個人的にはM11「Window Somewhere」やラストの「You are my House」がツボ。

聴くたびに心洗われるような感覚に陥ってしまう。





2022年11月14日月曜日

Trilogy?
















 【今週の一枚】













Fred again.. - Actual Life 3 (January 1 - September 9 2022) [Atlantic Records UK 2022]

敏腕プロデューサーとして名を馳せるFred again..ことFred John Philip Gibsonは昨年2枚のソロ・アルバムをリリースしている。

それぞれ「Actual Life」というタイトルが冠された作品は録音時期が2020年の4月14日から12月17日、そして2021年の2月2日から10月15日の2枚で、去年の年間ベスト・アルバムはどちらかに絞り切れずに、2枚をダブル・アルバム扱いにして選出した。

そして今年また同じくタイトルを「Actual Life」とし、今度は元旦から9月9日までが収録されている。

今作を含めた3作品が三部作として終結するのか、これからも「Actual Life」シリーズが続いていくのかは知る由も無いが、ひとつだけ言えるのは今作も前2作にひけをとらない充実作だという事だ。

彼のSNSなどをフォローしていると、その殆どが自身のステージの喧騒と高揚感を捉えた映像で埋め尽くされていて、本当にフロアーの現場を愛しているのがひしひしと伝わってくる。

しかし今回の3作目の「Actual Life」を聴くにつけ、全編にわたって繰り広げられるメランコリックなメロディは彼のソングライターとしての手腕が並々ならぬものである事を再確認させてくれる。

来年くらい来日してくれんかなあ。








2022年11月7日月曜日

村正










 

【今週の一枚】













Mura Masa - Demon Time [Anchor Point Records 2022]

今年のフジロックで来日、ホワイト・ステージで大トリを務めた英国ガーンジー島出身のプロデューサーMura MasaことAlex Crossanによる2年ぶりの3rdアルバム。

パンク・ロック寄りのアプローチを見せた前作から、国際色豊かなダンス・ミュージックへの回帰を果たした作品に仕上がっている。

パンデミック期間中にかなり精神的に落ち込んだ時期があったらしく、8か月近く全く音楽が作れなかったそうだが、エクササイズを始めたりセラピーを受けたりして徐々に回復を果たした模様。

アルバム・タイトルのDemon Timeは英語のスラングで「夜間にパーティで羽目を外す」みたいな意味で使われるそうだが「何かに没頭する」というニュアンスもあるそうで、それをネガティブな意味でなく「楽しい事に没頭する =Have Fun」というコンセプトで作品作りが進められたそうだ。

多彩なゲスト陣が多数参加しているが、昨年4ADからアルバムを出したErika de Casierは自分の作品よりコッチのほうがハマってるのでは、なんて思わされたし、日本人ラッパーTohjiが参加したM3「Slomo」は今作のハイライトと言えると思う。

全12曲で収録時間30分と短めだが、内容は実に濃密。

アートワークはSEGAのキャラクターSonic the Hedgehogにインスパイヤされたものなのだとか。







2022年10月31日月曜日














 【今週の一枚】













Nick Hakim - Cometa [ATO 2022]

ブルックリンを拠点に活動するNick Hakimによる3rdアルバム。

2020年の2nd「Will This Make Me Good」のあと昨年はRoy Nathansonとのコラボ・アルバム「Small Things」をリリースしており、なかなかに旺盛な活動ぶりだ。

昨年4ADより傑作アルバムをリリースしたHelado NegroやDJ Dahl、大御所Arto Lindsayがゲスト参加している。

アルバムに先行してシングル・カットされたM2「Happen」には最近新作を発表したばかりのAlex Gがピアノを演奏している。

元々Nickはチリ人の母親とペルー人の父親のもとワシントンDCで生まれ育ったそうだが、そういった出自も彼のコスモポリタンな音楽性に大いに影響しているのだろう。

タイトルのCometaはスペイン語で「凧」という意味だそう。









2022年10月24日月曜日

ここに

















【今週の一枚】















サンフランシスコ生まれでオレゴン州ポートランドを拠点に活動するフィメイル・ギタリストのソロ名義としては6枚目のアルバム。
Sharon Van Ettenの'14年作「Are We There?」へのゲスト参加やTara Jane O'neilとのコラボレーションでも知られ、近年もDirty ThreeのドラマーJim Whiteとのコラボ作やギタリストWilliam Tylerとのデュオ作を発表している。
彼女の作品は数々の映像作品のサウンドトラックにもフィーチャーされており、本当に幅広い活動振りと言えるだろう。
アメリカン・ゴシック、ネオ・トラディショナル・フォーク、エレクトリック・カントリー・ブルース等々、彼女の音楽は多様な影響下に生み出されたものだが、とっつきにくさとは無縁で非常に親しみやすいものだと言えると思う。
冒頭を飾る「In Dark Water」のアルペジオとスライド・ ギターのサウンドには痺れさせられたし、締めの「Beat the Drum Slowly」も実に味わい深いが、個人的にはM6「The Crack Where the Light Gets In」がハイライト。
陳腐な言い方だが聴くたび希望と勇気を与えてくれるようなトラックだと思えた。
1970年生まれという事で同い年でもあり、これからも末永い活躍を期待したい。





2022年10月18日火曜日

元通り













 

【今週の一枚】














Alex G - God Save the Animals [Domino 2022]

フィラデルフィアのAlex GiannascoliことAlex Gによる9thアルバム。

同名女性アーティストとの混同を避ける為に(Sandy)を名前に冠していたAlex G、どうやら現在は元に戻して活動している模様。

元々宅録志向の彼、自宅で録りためた音源をネットに多数UPするスタイルで知られるが、今作はデモ音源をスタジオに持ち込み、バンド・メンバーとエンジニアを迎えて作りこまれたそうだ。

特に自身のボーカルについては何度も納得行くまで録り直し、その上で様々なエフェクトを施すという拘り様だったらしい。

Jessica Lea MayfieldやMolly Germerといったフィメイル・シンガーをゲストに迎えている曲もあるが、Alex G自身の声が曲によって変幻自在ともいうべきスタイルを取っており、非常に面白い。

アルバムのトータル・クオリティも申し分ないが、M5「No Bitterness」やM10「Immunity」、ラストの「Forgive」なんかは彼のキャリアを代表するトラックに成り得るのでは。

前作に引き続き今作のアートワークも彼の実のお姉さんが手掛けたそう。





2022年10月11日火曜日

ベイブ


















 【今週の一枚】













Babebee - Mind Over Matter [The Honeypot 2022]

Babebeeはアトランタを拠点に活動する弱冠20歳のSSW、プロデューサー、パフォーマーで今作がデビュー・アルバム。

インスパイヤされたアーティストにImogen Heap、Björk、The xx、Frank Ocean、Charli XCX等を挙げているらしく、このラインナップを見るだけで、俄然興味が沸いてしまったが、肝心の音のほうも期待以上だった。

メロディ・メイカーとしての才能も抜きんでていると思うが、トラック・メイカーとしても特筆すべきセンスを兼ね備えている。

本人はもともと音楽で生計を立てる事を想定していなかったそうだが、コロナ禍の2020年にAbletonというツールを使って音源制作を始め、ネット上で様々なアーティストと交流しつつ本作を完成に漕ぎ付けたそうだ。

逆に言えばパンデミックが産み落とした新たな才能という事なのだろう。

ここにまた一枚、ベッド・ルーム・ポップの逸品が。







2022年10月3日月曜日

放熱

















 【今週の一枚】













Sadurn - Radiator [Run For Cover 2022]

フィラデルフィアの4人組Sadurnのデビュー・アルバム。

バンドはリード・シンガーGenevieve DeGrootのソロ・プロジェクトとして活動を開始し、ギタリストのJon Coxが加わってデュオとなり、のちにドラマーのAmelia SwainとベーシストのTabitha Ahnertが加わって現在のラインナップになったようだ。

影響を受けたアーティストにJason Molina、Gillian WelchにAlex G、Elliott Smith等を挙げていて、この面子を見るだけで、聴く前から良くないワケが無い、と確信させられてしまった。

ミニマルなアレンジの枯れ系エモ・フォーク、という括りになるのだろうけど、陰鬱な印象とは無縁で、ポジティブで希望に満ちたサウンドが展開されている。

どこまでも素朴で簡素な音楽だが、しみじみメロディの良さを堪能させてくれる好盤だと思う。





2022年9月26日月曜日

ねがい











 

【今日の一枚】














Anna Butterss - Activities [Colorfield Records 2022]

豪州Adelaide出身で現在はLAを拠点に活動するベーシストのソロ・アルバム。

セッション・ベーシストとしての彼女の経歴は驚く程に華麗きわまりないもので、これまで共演したミュージシャンはMakaya McCravenにAimee Mann、Phoebe BridgersやBright Eyes、といった大物が目白押しだ。

そんな彼女が手掛けたソロ・アルバムは豪華客演陣を迎えて制作されたものではなく、全ての作曲を彼女自身が手掛け、アルト・サックスとパーカッションにゲストが参加した以外は全てのインストゥルメントを彼女自身が演奏している。

ベースが主役の楽曲が多いと言えばそうなのだけど、いかにもベーシストが作りました、という作品になっていないのも興味深い。

様々なスタイルの楽曲が並び多様性がありつつもアルバムとしての統一感が感じられるのも素晴らしい。

おそらくこれからも様々なミュージシャンから引っ張りだこ状態が続いていくのだろうけど、またソロも出して欲しいと願う次第。








2022年9月21日水曜日

破格のふたり










 

【今日の一枚】
















色んな分野で若き才能の活躍が注目を集める昨今だが、このキーボーディストとドラマーのデュオにも大概驚かされた。
鍵盤を自在に操るDOMi LOUNAはフランス生まれの22歳、フランス国立高等音楽院を経てバークリー音楽大学という経歴の才媛、JD Beckはまだティーンネイジャー。
そんな二人のデビュー・アルバムはゲスト陣のラインナップからして半端無い。
Mac DeMarco、ThundercatにAnderson Paak、そして大御所Herbie Hancock。
そんな面子を迎え、堂々たるパフォーマンスを披露しているのは圧巻としか言いようがない。
彼等の演奏は活動当初からSNSで大きな話題を呼んで拡散されたが、今作はあえてスタジオで作りこまれたところにも拘りを感じる。
正に末恐ろしいまでの才能の登場だ。











2022年9月12日月曜日

グレイ











 

【今日の一枚】













Silvana Estrada - Marchita [Glassnote 2022]

メキシコのVeracruz州Coatepec出身のフィメイルSSWのデビュー・アルバム。

現在24歳という彼女はミュージシャンで弦楽器製作者の両親の元で音楽に囲まれた幼少期を過ごし、13歳でビリー・ホリデイのコンピレーションを聴いて大きな衝撃を受けた事がその後のキャリアに多大な影響を及ぼしたのだとか。

ベネズエラのクアトロと呼ばれる4弦楽器の弾き語りをベースに、ストイックと言えそうな程に抑制的なアレンジを施したサウンドは派手さとは無縁ながらも、実にエモーショナル。

この極力装飾を排する、というスタイルはかなり意図的に追及されたものらしい。

音楽性は違うが、Cowboy Junkiesの1988年のセカンド・アルバム「The Trinity Session」に感じた凄味と近しいものを感じた次第。

本作のリリースはアメリカのインディーレーベルGlassnoteで、Gustavo Guerreroがプロデューサーを務めた。

彼女は今月から来月にかけて行われるAndrew BirdIron &WineのWヘッドライナー・ツアーのオープニング・アクトに抜擢されている模様。






2022年9月5日月曜日

ブルー












 

【今日の一枚】













Cass McCombs - Heartmind [Anti 2022]

Cass McCombsの3年振りの新作は10枚目と言う節目となるアルバムとなった。

最初のアルバムが2003年のリリースなので、ほぼ2年に一枚に近いペースで作品を発表してきた事になるワケで、精力的な活動ぶりが伺える。

個性派ドラマーKassa Overallが客演したオープニング・トラックの「Music Is Blue」のラフでリラックスしたムードのガレージ・ロックっぷりに思わず頬が緩んでしまうが、続く「Karaoke」と「New Earth」の拍子抜けしてしまいそうな程に爽やかなギター・ポップには新鮮な驚きも感じた。

M4「Unproud Warrior」やM6「A Blue, Blue Band」は彼の真骨頂とも言うべきレイド・バック気味のカントリー・ロックで実に味わい深い。

ラストを飾るタイトル・トラックの「Heartmind」はエクスペリメンタルなアプローチで異彩を放っているが、心地良い余韻を残してくれる。







2022年8月29日月曜日

十重奏










 

【今日の一枚】













Jasmine MyraHorizons [Gondwana Records 2022]

英国リーズを拠点に活動するサックス奏者Jasmine Myraのデビュー・アルバム。

彼女が率いるバンドは10名編成という大所帯で、そういう形態をテンテットと呼ぶというのを初めて知った。

一聴する分にはかなりオーセンティックかつスタンダードなジャズに聴こえるようで、どこか逸脱した印象もして聴いていてなんとも心地良い。

インスパイヤされたアーティストにBonoboやOlafur Arnalds、Moses Sumneyなどを挙げているようで、エレクトロニカやポスト・クラシカルからの影響も色濃いのかも。

M4「Words Left Unspoken」なんかに顕著だが、ジャズのフォーマットを採りつつ、「純粋に美しい音楽」を追求している姿勢が感じられる。

元々彼女はGondwana RecordsのオーナーMatthew Halsallにその才能を見出され、今作のプロデュースは彼が務めている。






2022年8月23日火曜日

ひとりじゃない











 

【今日の一枚】














Florist - Florist [Double Double Whammy 2022]

Emily A. Sprague率いるブルックリンのインディー・フォーク・バンドの3年振りの4thアルバム。

前作「Emily Alone」はバンド名義ではあるものの実質的にソロ・ワークだったワケだが、今作は2019年の夏にメンバー4人がHudson Valleyのコテージに集結、1か月にわたって共同生活を営みながら録り続けられた音源がベースとなっている模様。

全19曲1時間近い本作はM2「Red Bird Pt. 2 (Morning)」やM16「Dandelion」といったEmilyのフィンガーピッキングの弾き語りをメインにしたアンビエント・フォークは勿論の事、インストゥルメンタル作品も多く収録されており、全体の統一感も見事だ。

アレンジは本当に抑制的なのだけれど、M11「43」やM18「Feathers」などを聴くにつけバンド・サウンドの醍醐味を感じた次第。

2020年にソロとして初来日を予定していたEmilyだが、コロナ禍によりキャンセルとなっており、ようやく今年10月に長野で開催されるフェスに参加予定なのだそう。










2022年8月16日火曜日

溜息

 










【今日の一枚】

Dario Lessing - Frequency [Dario Lessing 2022]

ベルリンのプロデューサーにしてマルチ・プレイヤーのDario Lessingによるニュー・アルバム。

2019年にはDeutsche Grammophonから作品をリリースしていた彼だが、今作はセルフ・リリース。

実の妹であるShamsを始め豪州人James Chatburn、ニュージーランドのGraham Candy、米国人Stimulus、オーストリア人のRezar、そして同国人Marioという実に多彩な6人のゲストを迎えて制作されたようだ。

ベースにあるのはクラシカル・クロスオーバーになるのだろうがサウンドのほうもヴァリエイションに富んだ極上メランコリック・エレクトロ。

個人的にはJames Blakeにこういう音をやってもらいたいなあ、なんて感じてしまった。

それにしても溜息が出そうになる程のイケメンやな。








2022年8月8日月曜日

色々










 

【今日の一枚】














beabadoobee - Beatopia [Dirty Hit 2022]

フィリピンのIloilo City生れでロンドン育ちのBeatrice Kristi Lausによるbeabadoobeeのセカンド・アルバム。

そのエキセントリックな風貌と強烈な個性で注目を集める彼女だが、ソングライターとしてかなり本格派だ。

次から次へと繰り出されるキラー・チューンの数々はThe Primitivesの1989年の傑作セカンド・アルバム「Pure」なんかが連想されたりもしたし、作品を繰り返し聴くにつけ、往年のLushが目指そうとして最後まで辿り着けなかった境地に楽々と到達しているのではないか、なんて思わされたりもした。

ライブはオーソドックスなギター・バンドの編成だが、幾つかの演奏を動画で見た限りでは、かなりタイトな演奏ぶりで舌を巻かされた次第。

今月のサマー・ソニックで初来日を果たす模様。





2022年8月1日月曜日

ストイック









 

【今日の一枚】













Maria BC - Hyaline [Fear of Missing Out Records 2022]

オハイオ出身で現在カリフォルニア州オークランドを拠点に活動するフィメイルSSWのデビュー・アルバム。

基本的には殆どの楽曲がエレクトリック・ギター弾き語りのスタイルで儚げながらも強い意志を感じさせるメゾ・ソプラノのヴォーカルが印象的。

かなり抑制的なアレンジで、殆ど彼女一人で作り上げられたようだが、数少ないゲストのなかには彼女の父親が含まれておりオルガンで参加している模様。

浮遊感に溢れアトモスフェリックなムードに覆われた作風はTara Jane O'neilなんかも連想させられた。

ストイックとさえ言えそうな程に装飾を削ぎ落したスタイルでこんなにも濃密な音空間を現出するその力量に圧倒される。







2022年7月25日月曜日

問題です









 

【今日の一枚】













Andrew Bird - Inside Problems [Loma Vista 2022]

シカゴのSSWでマルチインストゥルメンタリストのAndrew Birdによる2年振りのニュー・アルバム。

多彩な活動ぶりで知られる彼、純粋なソロ名義の作品としても13作目の作品。

これまでAni DifrancoRighteous Babe RecordsFat Possum Records等から作品をリリースしてきたが、ここ数作はLoma Vistaに定着している。

今回の作品は4人編成のバンドによるライブ・レコーディングの手法が採用されており、その音源にMadison Cunninghamによるバッキング・ヴォーカルがオーバーダブされいる模様。

プロデュースはRyan AdamsJenny Lewisの作品も手掛けた事で知られるMike Violaが担当、ギタリストとしても作品に参加している。

とてもリラックスしたムードのサウンドでありながらも決して弛緩する事はなく、アルバム全体を覆う程良いテンションが聴いていてとても心地良い。

これまでAndrew Birdは2017年と2020年の2回にわたって作品がグラミー賞にノミネートされており、メディアの露出も少なくないようだが、本国と日本の知名度の差が激しいアーティストの一人と言えるのでは。




2022年7月19日火曜日

酷暑










 

【今日の一枚】













Whatever The Weather - Whatever The Weather [Ghostly International 2022]

Whatever The Weatherは英国人プロデューサーLoraine Jamesによる別名プロジェクト。

本人名義の2作品はHyperdubからリリースしてきた彼女、本作はGhoslty Internationalより。

Telefon Tel Avivがマスタリングを手掛けている事でも話題を呼んでいる。

全てのトラックのタイトルが気温で表記されているが、記録的な猛暑の欧州のなか今日の本人のツイートが「feeling very」と綴られラストの「36℃」のリンクを貼っているユーモア・センスが微笑ましい。

DeftonesやAmerican Footballからの影響を口にしたり、妙に日本のマスロックに詳しかったりしつつ、そういう影響を全く想起させないクール極まりない電子音を全編にわたって展開しているのが実に興味深く思える。

多分実際の彼女はとても人間味溢れる人柄なんだろうなあ。




2022年7月11日月曜日

乱雑












 

【今日の一枚】












Samm Henshaw - Untidy Soul [Dorm Seven 2022]

関根勤が「もし生まれ変われるとしたら?」という問いにスティーヴィー・ワンダーと答えた、というエピソードがとても好きなのだけど、このSamm Henshawも「こんな歌声に生まれ変わりたい」と多くの人に思わせる天賦の才能の持ち主ではないだろうか。

南倫敦の牧師の子として生まれ、15歳の頃には作曲を始め2015年にメジャーのColumbiaレーベルからEPをリリースして大きな話題を呼んだ彼がその後紆余曲折を経てやっとリリースに漕ぎ着けたデビュー・アルバム。

のっけから「Still No Album」なんて自虐的なIntroを持ってくるセンスも愉しいが、7年待たせただけある充実作だ。

HipHopの影響も少なからず感じさせつつも、基本的には往年のR&B全盛期を彷彿させるオーセンティックなソウル・ミュージック。

先行シングルとなったM3「Grow」やM15「Still Broke」も素晴らしいが個人的には郷愁を誘われるM12「East Detroit」がツボ。

9月には再々延期となっている来日公演(ソールドアウト)が控えているようだけど、追加公演やってくれんかなあ。