2020年11月30日月曜日

ひしひし




 





【今日の一枚】









Moses Boyd - Dark Matter  [Exodus Records 2020]


活況を呈す新世代UKジャズ・シーンにおいて最重要人物の一人と目されるMoses Boyd

ドラマーとして数々の作品に参加、プロデューサーとしても活躍する彼だが、自身の名を冠した作品は今作が初めてとの事。

Nubya GarciaGary Crosbyをはじめとした数多くのゲスト・ミュージシャンを迎えて制作された本作、ホーン・セクションが前面に打ち出された序盤からエレクトリック・ギターにフォーカスを当てた「Y.O.Y.O」に繋がっていきPoppy AjudhaObongjayarのスタイルの違う二人のヴォーカル曲が並んだのちにJoe Armon-Jonesのピアノをフィーチャーした「2 Far Gone」を挟んで終盤に向かってクラブ色の強いサウンドが展開されていくのだが、その構成力は実に見事だと思う。

アルバムの随所で目を見張るべきドラム・プレイが展開されているが、と同時にプログラミングも大胆に導入されている。

サウス・ロンドンのコンテンポラリー・ジャズ・シーンの隆盛ぶりをひしひしと実感できる充実作だと思う。








2020年11月24日火曜日

働き者


 







【今日の一枚】










Bill Callahan - Gold Record [Drag City 2020]

Bill Callahan名義では6作目、SMOGの時代も含めるとなんと18作目にあたるというニュー・アルバム。

全20曲収録、1時間を超える大作だった昨年の「Shepherd in a Sheepskin Vest」に比べると今作は10曲で40分足らずとコンパクトな仕上がり。

リラックスしたムードを醸し出しつつも濃密なサウンドは彼の持ち味と言えるだろうが、その部分は今作においても健在。

まんまタイトルが「Ry Cooder」という楽曲が収録されていたり、オープニングの「Pigeons」の冒頭から激渋バリトン・ヴォイスで「Hello, I’m Johnny Cash」と呟き、「Sincerely, L. Cohen」で締める、なんて粋な趣向も。








2020年11月16日月曜日

お手本







【今日の一枚】 





Ólafur Arnalds - Some Kind of Peace [Mercury 2020]

アイスランドのオーラヴル・アルナルズ、傑作「Re:member」に続く2年振りの5thアルバム。

駄作が無い、というか常にハイレベルの作品を提示してくれる彼だが、今作もポスト・クラシカル、クラシック・クロスオーバーのお手本のような作品に仕上がっている。

オープニング・トラックはBonoboとのコラボレーションで去年二人で書いたものを今年リモート作業で完成させたそう。

同郷のSSW、JFDRをゲスト・ヴォーカルに迎えたM5「Back To The Sky」、ドイツ人シンガーJosinをフィーチャーしたM8「The Bottom Line」それぞれに感動的な佳曲で作品の良いアクセントになっている。

従妹のÓlöf Arnaldsもそろそろ新作を出してくれんかなあ。










2020年11月9日月曜日

多大










 【今日の一枚】










This Is The Kit - Off Off On [Rough Trade 2020]


KateStables率いるThis Is The Kit、3年振りの5thアルバムは前作に引き続き、英Rough Tradeより。

英国出身でありながらフランス在住で、トレードマークはバンジョーというボヘミアンな彼女、これまでも高い評価を受けてきたなかにあって、今作で一皮むけた印象。

洗練、という言い方をすると一歩間違えたら退屈になってしまいがちではあるが、単にサウンドの幅が広がっただけではなく、コアの部分は不変でありながら強靭かつしなやかな音作りに成功していると思う。

プロデュースはJosh Kaufmanが務め、英国南西部WiltshireのReal World Studiosでレコーディングされた模様。

インタビューでAni Difrancoに多大な影響を受けた、と発言しているのを目にし、なんだか嬉しくなってしまった。









2020年11月2日月曜日

歌と器

 









【今日の一枚】












Adrianne Lenker - Songs and Instrumentals [4AD 2020]


昨年2枚のアルバムをリリースし好評を博したBig Thiefの紅一点Adrianne Lenkerがソロとしてウタモノとインスト作の2作を同時にリリース。

それぞれ独立した作品であるが、プレイリストで繋げて聴いても違和感無く浸れた。

USインディー界において確固たる地位を築いていると言って過言ではないBig Thiefであるが、彼女の創作意欲はバンドの枠に収まりきる事無く、今回のダブル・アルバムに結実している。

彼女と比較されるフィメイルSSWは少なくないだろうけど個人的にはRed House Painters時代からソロ初期のMark Kozelekなんかに近しい雰囲気を感じる。