2020年8月31日月曜日

自由都市

【今日の一枚】
Duval Timothy - Help [Decca Publishing 2020] 

サウス・ロンドンとシエラレオネのフリータウンを股にかけて活躍するピアニストにしてサウンド・アーティストによる4枚目のアルバム。
前作収録曲「No」がSolangeの最新作でサンプリングされた事でも知られる。
オーセンティックなピアノのサウンドを主体としつつも、その音作りは非常に自由奔放なスタイルで、曲毎に様々な表情を見せる。
Twin Shadow、Lil Silva、Vegyn、Mr. Mitchといった多彩なゲスト・ヴォーカリストも見事な客演ぶり。
作品を覆う、そこはかとないモンドなテイストも味わい深い。
先行シングルとなった「Slave」はPharrell Williamsのインタヴューをスポークン・ワードに採用、PVの凝った映像も相まって強烈な印象を与えてくれる。








2020年8月24日月曜日

Trilogy

 


【今日の一枚】






Son Lux - Tomorrows I [City Slang 2020]

Son LuxはLAのコンポーザーRyan Lottによるソロ・プロジェクトとして活動を開始し、現在はギタリストのRafiq Bhatia、ドラマーのIan Changが正式メンバーとして加わり、3人組として活動している。

今回の作品は2年振りの新作だが、今後1年がかりでリリースされる三部作の第一部であり最終的に3つの作品をまとめたものが来年フィジカルで発売される予定なのだとか。

Kadhja Bonetをゲスト・ヴォーカルに迎えた先行シングル「Plans We Made」をはじめとして緊迫感に満ちつつ濃密極まりない音空間を現出させたトラックが並ぶ。

個人的には「Honesty」に最も強く感銘を受けた。

崇高な印象のストリングス・インスト「Involution」がラストを飾る趣向もなんとも粋だ。

今作に連なる2作目・3作目のリリースが実に楽しみである。







2020年8月18日火曜日

夏娘達



【今日の一枚】





LAの3人姉妹バンドHAIMの3rdアルバム。
Lou Reed御大の名曲「ワイルドサイドを歩け」にインスパイアされたトラック「Summer Girl」が昨夏リリースされ話題を呼んだのを皮切りに着々と先行シングルをリリース、コロナ禍をものともせぬかのようにフル・アルバムの発表に漕ぎ着けた。
アートワークは映画監督Paul Thomas Andersonによって撮影されたそうで、シングルのPVの撮影も全て手掛けており、蜜月ぶりをうかがわせる。
プロデュースはDanielle Haim本人とRostam BatmanglijAriel Rechtshaidによって為されたようだ。
うだるような暑さが続く真夏の日が続くが、彼女たちの颯爽としたサウンドに浸りつつ過ごすのも悪くない。




2020年8月12日水曜日

超雄達



【今日の一枚】




Jamie IrrepressibleことJamie McDermott率いるThe Irrepressiblesの8年ぶりとなる3rdアルバム。Röyksoppの「The Inevitable End」における客演でも話題を呼んだ彼、とりわけ「Something in My Heart」については個人的には2010年代を代表する名曲のひとつだと思っている。
今作については2018年5月に「Submission」をリリースしたのを皮切りに4枚の先行シングルを発表したのちに満を持してアルバム発売に漕ぎつけた模様。
オープニング・トラックの「Anxiety」のイントロを聴くなり頬元が緩んでしまいそうになるが、全編遺憾なくJamie節が展開されている印象。
なかでもハイライトは2ndシングル「Dominance」。
センスの塊のような変態ディスコ・ミュージックではあるまいか。

2020年8月3日月曜日

無関心



【今日の一枚】



Fiona Apple - Fetch the Bolt Cutters [Epic 2020]

今年の4月に突如リリースされたフィオナ・アップルの8年ぶりの5thアルバム。
17歳での衝撃のデビューからかれこれ25年近く、寡作で知られる彼女だが、シーンから熱狂的な支持を受ける結果となった。
辛口で知られるレビュー・サイトが10点満点をつけた、とか各サイトの今年上半期のベスト・アルバムに軒並み選出、とかいうエピソードに枚挙に暇がない程だ。
しかし決してとっつき易い音とは言えないと思うし、ここまで手放しで絶賛されているのは少々違和感も。
ストイックなサウンド・アレンジやレアな感情を剥き出しにしたヴォーカル・スタイルはNirvanaの「In Utero」や彼女が敬愛してやまないというJohn Lennonの「ジョンの魂」なんかを想起させられたりもした。
メジャー所属のアーティストには珍しく、PVは一切制作しておらず、プロモーションやセールスには一切関心がないのだろうと想像されるけど、それでこの反響というのは何だか皮肉な感じもしてしまう。