2023年8月28日月曜日















 【今週の一枚】














Eluvium - (Whirring Marvels In) Consensus Reality [Temporary Residence 2023]

米国ポートランドのMatthew Cooperによるソロ・ユニットEluviumの新作アルバム。

数多く生み出されてきたポスト・クラシカル作品の逸品の数々にその名を連ねる作品だと思う。

T.S.エリオットの「荒地」とリチャード・ブラウティガンの「All Watched Over By Machines Of Loving Grace」からインスピレーションを得て制作された模様。

本格的なオーケストラル・ストリングス・アレンジはコロナ禍のなかAmerican Contemporary Music EnsembleやGolden Retriever、Budapest Scoring Orchestraのメンバーとネットを介して遠隔で演奏されているのだとか。

唯一女声ヴォーカルがフィーチャーされたM7「Void Manifest」が息をのむほどに美しい。






2023年8月21日月曜日

至宝














 【今週の一枚】












Sigur Rós - ÁTTA [Von Dur 2023]

アイスランド、レイキャビクの至宝、シガー・ロスの10年ぶりの8thアルバム。

タイトルのÁTTAはEightの意味だそう。

去年の来日公演は本当に感動的だったし、今作リリース直前に渋谷でリスニング・パーティが有ると知り速攻で予約したけど、これも素晴らしい体験だった。

今作は2012年に脱退したメンバーのKjartan Sveinssonの復帰作となっており、その唯一無二の至高かつ深遠な音楽性が遺憾なく発揮されている仕上がり。

オーケストレーションが大胆に導入されていて、実際現在彼らはオーケストラと北米をツアー中の模様。

ギター・バンドとしての彼等も偉大というほかは無いけど、オーケストラとの共演もとても見応えがありそうだ。







2023年8月16日水曜日

Acousmatic








 

【今週の一枚】













Salami Rose Joe Louis - Akousmatikous [Brainfeeder 2023]

Lindsay Olsenによるソロ・プロジェクトSalami Rose Joe Louisの4年ぶりの新作は前作に引き続きBrainfeederレーベルより。

「Zdenka 2080」をリリースした翌年にはそのアウトテイク集ともいうべき「Chapters of Zdenka」を発表しており、その後コロナ禍のなかで制作が進められた音源が今作に結実したという事だろう。

彼女のような「ザ・宅録アーティスト」にしてみればずっと室内に引き籠って音作りに勤しむのはそんなに苦痛ではないようにも思えてしまうが、全くストレスが無かったわけではないだろうと推察される。

愛用のRoland MV-8800を駆使して作り上げられたモンド感たっぷりの音世界は今作でも健在で、メロディの完成度の高さはこれまでのキャリアでも随一の完成度の高さを誇っているように感じられた。

アートワークは映像監督としても活動するというデザイナーWinston Hackingが手掛けており、オープニングを飾るタイトル・トラック「Akousmatikous (feat. Soccer96)」のMVは映像作家Carlos López Estradaによるアニメーションが採用されている。









2023年8月7日月曜日

フレットレス










 

【今週の一枚】













Blake Mills - Jelly Road [Verve Forecast 2023]

2021年のPino Palladinoとの連名作品「Notes With Attachments」が称賛を集めたBlake Mills、ソロ名義としては2020年の「Mutable Set」以来3年ぶりの5thアルバム。

敏腕プロデューサーとして名を馳せる彼だが、自身の作品も毎度の事ながら充実しまくっている。

ただソロ名義ではあるものの今作もヴァーモント州のアーティスト、Chris Weismanとの共作という形が取られている。

もとはAmazon Primeのドラマ・シリーズのミュージック・ディレクターを務めることになったミルズが共通の友人であるKyle ThomasにChris Weismanを紹介され、意気投合した二人が共同でドラマの音楽制作を始め、その後2022年春にこの「Jelly Road」が録音されたようだ。

昨年にはPino Palladinoとともに来日し、その公演にはSam Gendelも名を連ねていたが、今回のアルバムにも数曲で演奏を披露しており、その密接な関係性がうかがえる。

MillsとWeismanはこの6月に20年数年ぶりに開催されたジョニ・ミッチェルの公演に参加、その後Blake Mills Featuring Chris Weisman Tourと銘打ったツアーをスタートさせている模様。

4曲目の「Skeleton Is Walking」の長尺の荒々しいギター・プレイが印象に残るが、これはミルズ自身がサスティナー内蔵のフレットレス・バリトン・ギターで演奏しているらしい。

このギター、彼のお気に入りらしく、昨年の来日の際も披露していたのだとか。