2024年4月22日月曜日











 

【今週の一枚】













Four Tet - Three [Text Records 2024]

ロンドンのKieran Hebdenによるソロ・プロジェクトFour Tetの4年ぶりの12thアルバム。

Fred again..やSkrillexとのコラボレーションでメジャー・シーンでも注目を集めたFour Tetだが、その創造意欲の充実ぶりをひしひしと実感させてくれる作品に仕上がっている。

オープニングの「Loved」からエンディングの「Three Drums」に至るまでの全8曲45分の至福の音楽体験を提供してくれる今作だが、なかでも4曲目の「Daydream Repeat」は彼のキャリアを通じても屈指の名曲のひとつと言えるのではないだろうか。

奇しくも彼は先週金曜日に静岡で開催されたRainbow Disco Clubに出演するため来日しており、その流れで昨日渋谷のWOMBで19時から23時間までたったひとりで4時間にわたるDJプレイを披露したようで余程行こうかと思ったりもしたのだけど、お爺さんなので4時間立ちっぱなしは流石にキツ過ぎる、と断念した次第。





2024年4月16日火曜日

回帰















 【今週の一枚】













Diane Birch - Flying On Abraham [Legere Recordings 2024]

ミシガン生まれのフィメイルSSW、Diane Birchの11年ぶりとなる3rdアルバム。

2013年の2nd「Speak A Little Louder」には非常に深く感銘を受け、当時愛聴したものだったが、その後彼女が青春時代に深く影響を受けたニュー・ウェーブのバンドのカヴァー集「The Velveteen Age」を発見したり、先鋭的なミニ・アルバム「Nous」もフォローしていたが、待望の新作のリリースに心躍る思いだ。

10年を超える年月の間に彼女自身様々な音楽性を模索してきた事は想像に難くないが、結果的にバック・トゥ・ルーツ、バック・トゥ・ベーシックというべきスタイルに回帰している。

デビュー作を発表する前にはビバリーヒルズのラウンジでソウル・ミュージックの名曲やオリジナル曲をピアノ弾き語りで歌っていた経歴を持つ彼女が模索の末に辿り着いた音楽がこの作品に詰め込まれていると言えるだろう。

7月にはブルーノート東京で3日間にわたる来日公演を予定しているらしく、今作の音楽性が会場の雰囲気にとても似つかわしく思え、今から楽しみにしている次第だ。









2024年4月8日月曜日

10











 

【今週の一枚】













1010Benja - Ten Total [Three Six Zero Recordings 2024]

1010BenjaはKansas Cityをベースに活動するBenjamin Lymanによるソロ・プロジェクトで今作がデビュー・アルバム。

2018年にリリースしたEP「Wind up Space」で大きな注目を集めたようだが、それから6年の月日を経て今作の完成に漕ぎ付けた模様。

オープニング・トラック「Looking Out」の壮大なオーケストレーション・サウンドにのっけから衝撃を受けるが、それに絡んでいくBenjaminのヴォイス・パフォーマンスが途轍もなくクールだ。

続く「Peacekeeper」は先行シングルとしてカットされ、怒涛のラップに圧倒される。

作品全体を通じてサウンド・コラージュのセンスがズバ抜けている印象だが、ソウル・ミュージックとしての完成度の高さも際立っているように感じる。

ヒップ・ホップの文脈で言っても大概のスタイルが出尽くしているように感じていたが、今作には並々ならぬ革新性を感じた次第だ。

全10曲、収録時間は30分強と短尺ながら、非常に濃密な音楽体験が出来る一枚と言えるのでは。




2024年4月1日月曜日

逸脱











 

【今週の一枚】













Juila Holter - Something in the Room She Moves [Domino 2024]

LAをベースに活動するJuila Holterによる6年ぶりとなる6枚目のアルバム。

前作「Aviary」を発表後は映画のサウンドトラックを手掛けたり、カレッジで音楽の講義を受け持ったりと様々な活動に携わっていた模様。

音響派の括りにカテゴライズされたり、アート・ポップといった形容やフリージャズやアンビエント・ミュージックからの影響も指摘される事の多い彼女の音楽だが、確固たる独自性を確立しているのは紛れもない事実だ。

今作においてはフレットレス・ベースのサウンドが特徴的だが、一時期のケイト・ブッシュの作品の影響を大きく受けていると本人も認めている。

アルバム・タイトルはThe Beatlesの楽曲「Something」の歌詞「Something in the way she moves」から着想したようでドキュメンタリー「Get Back」を観ていてひらめいたそう。

コロナ禍のなかで彼女は出産を経験しており、その事も今作の大きなインスピレーションとなっているようだ。

それにしても彼女のような独創性溢れるアーティストは往々にして難解でマニアックなサウンドの沼にはまりこみがちだと思うが、ポップ・ミュージックの枠組みから大きく逸脱することなくオリジナリティに満ちた大衆音楽を成立させている手腕は実に見事だと思う。