2024年1月29日月曜日

空耳











 

【今週の一枚】













Kali Uchis - Orquídeas [Geffen 2024]

コロンビア系アメリカ人のKali Uchisによる4thアルバムで2枚目のスペイン語の作品。

アルバム・タイトルはコロンビアの国花だという「蘭」。

幻想的なオープニング・トラック「¿Cómo Así?」で幕を開ける今作は全14曲収録されているが、正に変幻自在ともいうべき様々なスタイルで楽しませてくれる。

6曲目の「Te Mata」は正統派のコロンビア伝統歌謡を朗々と歌い上げているが、もう殆ど演歌の世界だ。

Rosalíaなんかもそうだけど、ラテン系のアーティストは違和感なく伝統歌謡を作品に取り入れるのは、自国の文化に誇りを持っとるんでしょうな。

先行して解禁された「Muñekita」はドミニカ出身のラッパー El AlfaとCity Girlsのラッパー J&Tをフィーチャーしたレゲトン曲でこれまた異彩を放っている。

流麗なメロディが印象的な「Tu Corazón Es Mío...」も素晴らしいし、ラスト・トラックの「Dame Beso/Muévete」は聴いているうちにカーニバルの喧騒のなかで踊っているかのような錯覚に陥ってしまいそう。

それにしてもスペイン語詞って英語に比べて「空耳ワード」が多いように思えるんだけど気のせいだろうか。






2024年1月22日月曜日

勝負










 

【今週の一枚】













Awich - THE UNION [and music 2023]

前作「Queendom」から一年半、Awichのニュー・アルバムがリリースされた。

先行して発表されていた「RASEN in OKINAWA」が素晴らしかったので大いに期待していたが、今回もまた溢れんばかりのエナジーを感じさせる力作に仕上がっている。

今作の発表を受けて11月にはKアリーナ横浜単独公演を敢行、18,000人にも及ぶ観客を熱狂させたというのだから凄まじい。

先日「踊る!さんま御殿!!」を観ていたらAwichが出演していたので大変驚いたのだけど、今回のアルバムを聴くにつけ、彼女は日本のヒップ・ホップ・シーンに軸足を置いたままで本気でメジャーなフィールドで勝負しようとしているのだろう。

ゆりやんレトリィバァが参加した「Bad Bitch 美学 Remix」も素晴らしいが、この曲に参加しているLANAという若いアーティストの歌唱力には度肝を抜かれた。

終盤の「かくれんぼ」から「Twinkle Stars」に連なるスイート&メロウなムードも実に味わい深く、Awichのシンガーとしての多面性を感じさせてくれる。

彼女が最初のEPをリリースしたのは2006年らしいので、既に長いキャリアを誇るワケだけど、その佇まいを見るにつけ、幾つになっても今のテンションを保ったまま活動をし続けているように思えてならない。






2024年1月15日月曜日

オプティミズム











 

【今週の一枚】













Penguin Cafe - Rain Before Seven...[Erased Tapes 2023]

Arthur Jeffes率いるPenguin Cafeの4年ぶりのニュー・アルバム。

コロナ禍をきっかけに伊トスカーナに家族で移り住み、彼の地で構想を練り上げ作品作りが進められた模様。

バンドのベーシストが共演したセネガルのアーティストから譲り受けたというパラフォンという木琴をはじめメロディカやウクレレ、クアトロなど多彩な楽器が演奏に使用され、作品に独特な雰囲気を醸し出している。

共同プロデューサーにはErased Tapesの主宰者であるRobert Rathsが名を連ね、リズム面でのアプローチに大いに貢献したようだ。

オプティミズムが作品の大きなテーマのひとつらしいが、その象徴ともいえるトラック「Galahad」には大いに感銘を受けた。

アルバム・タイトルは英国の古い諺「Rain before seven, fine before eleven.7時前の雨は11時には晴れる(そのうち良くなる)」から採られたものなのだとか。







2024年1月9日火曜日

変貌


















 【今週の一枚】













Julie Byrne - The Greater Wing [Ghostly International 2023]

NYのフィメイルSSW、Julie Byrneの6年ぶりとなる3rdアルバム。

2017年にリリースされ好評を博した前作「Not Even Happiness」発表の翌年に今作の楽曲を書き始め、2020年にレコーディングが開始されたが長年のコラボレーターであったEric Littmannが2021年に急逝するという悲劇に見舞われ制作作業が中断、新たにAlex Somersをプロデューサーに迎え完成に漕ぎ付けた模様。

元々彼女の持ち味である繊細でリリカルな幽玄アシッド・フォークをベースにしつつ、Eric Littmannのシンセ、Marilu DonovanのハープやJake Falbyによるストリングスが作品に彩りを添え、アンビエントの感触を残しつつもダイナミックなスケール感すら感じさせる作風に変貌している。

アコースティック・ギターを排した4曲目の「Summer Glass」などは正に新機軸に挑戦した楽曲と言えるのでは。

今作はGhostly Internationalレーベルから発表され、マスタリングはTaylor Deupreeが手掛けているそうだ。