2023年3月27日月曜日

平穏











 【今週の一枚】













Sandrayati - Safe Ground [Decca 2023]

サンドラヤティことSandrayati Fayはフィリピン人とアイリッシュ・アメリカンの混血でインドネシアのジャワ島とバリ島で生まれ育ったフィメイルSSW。

今作は英Deccaレーベルへの移籍第一弾でセカンド・アルバム。

プロデュースおよびミキシングはポスト・クラシカル界の重鎮Ólafur Arnaldsが担当、ふたりはプライベートでもパートナーなのだそう。

優しく温かみに満ち、かつ凛とした意志を感じさせる美しい歌声が実に印象的。

ストリングス・アレンジが大胆に施されたM5「Found」は屈指の名曲だと思う。

安息の地に流れる極上の調べにそっと身を委ねたい。






2023年3月20日月曜日

虚空












 


【今週の一枚】












CARM - CARM II [37d03d 2022]

yMusicの創設メンバーでトランぺッター・プロデューサーのCJ Camerieriによるソロ・プロジェクトのセカンド・アルバム。

前作に引き続きリリースはJustin Vernon、Aaron Dessner、Bryce Dessnerにより設立されたレーベル37d03dより。

1stにも参加していたJustin Vernonが今作でもゲストで招かれており、昨年佳作ソロを出したSean Careyがドラムを叩いているのも嬉しいが、M5「More and More」でEdie Brickellがフィーチャーされているのが注目される。

夫君のPaul Simon作品への参加でも知られるCJだが、そんな縁がこのコラボレーションに繋がったのだろう。

プロデューサーは前作に引き続きRyan Olsonが担当。

アルバム全体を通して流麗優美なホーン・オーケストレーションと実験精神溢れるトラック・メイキングを堪能出来るが、そんななかでもMike Noyceをボーカルに迎えたM8「A Void」が出色の出来だと思えた。


2023年3月13日月曜日

キッチン










 

【今週の一枚】













Magalí Datzira - Des De La Cuina [Bankrobber 2023]

マガリ・ダッチラと読むそうだ。

彼女はバルセロナ出身のダブル・ベース奏者にしてシンガー・ソングライターで今作がソロ・デビュー作となる。

バルセロナのサン・アンドレウ公立音楽学校で生まれ、数々の若手ミュージシャンを輩出したSant Andreu Jazz Bandに所属、シンガー、ベーシストとして歴代フロントウーマンに名を連ねており、サックス奏者の実兄Iscle DatziraとDatzira Brothersとしても活動している模様。

冒頭の「Riu (Intro)」の激渋ベース・サウンドに震撼させられるが、作品全体の印象は良質なアコースティック・ウタモノ・アルバムで、カタルーニャ語・スペイン語・英語にポルトガル語と実に様々な言葉で歌われているが、見事に調和している。

12曲30分弱の収録時間はチト短いような気もせんでないにしても、紛れもない充実作だと感じられた。






2023年3月6日月曜日

山の中










 

【今週の一枚】













Hania Rani - On Giacometti [Gondwana Records 2023]

ポーランドのGdańsk出身で現在はワルシャワとベルリンを拠点に活動するピアニストHania Raniによるソロ名義では2年ぶりの4thアルバム。

彼女が手掛けた、彫刻家アルベルト・ジャコメッティのドキュメンタリーのサウンドトラックの楽曲が13曲収録されている。

自身の奏でるピアノ・メインのインスト作で、実に美しい。

ジャコメッティの出身地であるスイスに一定期間移り住み、山中の外界から隔絶された環境に身を置いて制作が進められたそう。

共作をリリースした事もある長年のコラボレーターDobrawa Czocherが2曲でチェロを演奏している。

コラボ作品をDeutsche Grammophonからリリースしている彼女だが、ソロ作品は一貫してマンチェスターのGondwana Recordsより。