2022年7月25日月曜日

問題です









 

【今日の一枚】













Andrew Bird - Inside Problems [Loma Vista 2022]

シカゴのSSWでマルチインストゥルメンタリストのAndrew Birdによる2年振りのニュー・アルバム。

多彩な活動ぶりで知られる彼、純粋なソロ名義の作品としても13作目の作品。

これまでAni DifrancoRighteous Babe RecordsFat Possum Records等から作品をリリースしてきたが、ここ数作はLoma Vistaに定着している。

今回の作品は4人編成のバンドによるライブ・レコーディングの手法が採用されており、その音源にMadison Cunninghamによるバッキング・ヴォーカルがオーバーダブされいる模様。

プロデュースはRyan AdamsJenny Lewisの作品も手掛けた事で知られるMike Violaが担当、ギタリストとしても作品に参加している。

とてもリラックスしたムードのサウンドでありながらも決して弛緩する事はなく、アルバム全体を覆う程良いテンションが聴いていてとても心地良い。

これまでAndrew Birdは2017年と2020年の2回にわたって作品がグラミー賞にノミネートされており、メディアの露出も少なくないようだが、本国と日本の知名度の差が激しいアーティストの一人と言えるのでは。




2022年7月19日火曜日

酷暑










 

【今日の一枚】













Whatever The Weather - Whatever The Weather [Ghostly International 2022]

Whatever The Weatherは英国人プロデューサーLoraine Jamesによる別名プロジェクト。

本人名義の2作品はHyperdubからリリースしてきた彼女、本作はGhoslty Internationalより。

Telefon Tel Avivがマスタリングを手掛けている事でも話題を呼んでいる。

全てのトラックのタイトルが気温で表記されているが、記録的な猛暑の欧州のなか今日の本人のツイートが「feeling very」と綴られラストの「36℃」のリンクを貼っているユーモア・センスが微笑ましい。

DeftonesやAmerican Footballからの影響を口にしたり、妙に日本のマスロックに詳しかったりしつつ、そういう影響を全く想起させないクール極まりない電子音を全編にわたって展開しているのが実に興味深く思える。

多分実際の彼女はとても人間味溢れる人柄なんだろうなあ。




2022年7月11日月曜日

乱雑












 

【今日の一枚】












Samm Henshaw - Untidy Soul [Dorm Seven 2022]

関根勤が「もし生まれ変われるとしたら?」という問いにスティーヴィー・ワンダーと答えた、というエピソードがとても好きなのだけど、このSamm Henshawも「こんな歌声に生まれ変わりたい」と多くの人に思わせる天賦の才能の持ち主ではないだろうか。

南倫敦の牧師の子として生まれ、15歳の頃には作曲を始め2015年にメジャーのColumbiaレーベルからEPをリリースして大きな話題を呼んだ彼がその後紆余曲折を経てやっとリリースに漕ぎ着けたデビュー・アルバム。

のっけから「Still No Album」なんて自虐的なIntroを持ってくるセンスも愉しいが、7年待たせただけある充実作だ。

HipHopの影響も少なからず感じさせつつも、基本的には往年のR&B全盛期を彷彿させるオーセンティックなソウル・ミュージック。

先行シングルとなったM3「Grow」やM15「Still Broke」も素晴らしいが個人的には郷愁を誘われるM12「East Detroit」がツボ。

9月には再々延期となっている来日公演(ソールドアウト)が控えているようだけど、追加公演やってくれんかなあ。




2022年7月4日月曜日













【今日の一枚】













Denzel Curry - Melt My Eyez See Your Future [Loma Vista 2022]

フロリダ出身でMiamiおよびLAを拠点に活動するラッパーDenzel Curryによる3年振りの5thアルバム。

大御所Robert GlasperThundercatJPEGMafiaSlowthaiといった豪華絢爛ともいうべきゲスト陣を迎えて制作された作品となった。

日本のカルチャーに造詣が深い事で知られる彼、終盤に「Sanjuro」と「Zatoichi」といった邦画に影響を受けたと思しきトラックを続けて並べ、これが二つとも名曲。

この作品は彼が幼少の頃から慣れ親しんできた様々な音楽の要素がちりばめられているが、ストロング・スタイルのラップを縦横無尽に展開しつつも、作品全体をそこはかとなく覆うスイートでロマンティックなイメージには大いに好感を抱かされた。