2023年1月30日月曜日

異様

















 【今週の一枚】














Daniel Avery - Ultra Truth [Phantasy Sound 2022]

なんともグロテスクなアートワークが強烈な印象を放つ、英国ボーンマス出身のプロデューサーDaniel Averyの新作アルバム。

2013年以来11作目にあたる今作はKelly Lee OwensやHAAi、Sherelle等のゲストを迎え、自身のスタジオThames Sideで制作された模様。

これまでの自分の作品は日常世界からの逃避や気晴らしをイメージしたものだったが、今作は暗闇そのものを直視した内容になっている、と本人がコメントしているようだ。

美しいピアノの旋律がドローン・ノイズに変幻していくオープニング・トラック「New Faith」には大いに圧倒されたし、続くタイトル・トラック「Ultra Truth」も妖艶な響きをたたえている。

全15曲、一時間弱の緊迫感溢れる音世界に存分に浸る事が出来る作品だ。









2023年1月23日月曜日

羞恥










 

【今週の一枚】













Shygirl - Nymph [Because Music 2022]

サウス・ロンドン出身のShygirlことBlane Muiseのデビュー・アルバム。

Nuxxeレーベルの創設者の一人に名を連ね、2016年に最初のEPをリリースして以来多数の音源を発表し続けていた彼女、待望の1stアルバムだ。

様々なアーティストとのコラボレーションも盛んで、それぞれの最新作に参加したArcaやMura Masaは今作に深く関わっている。

2018年まではモデルとしても活動していたそうで、UKアンダーグラウンド・エレクトロ・シーンのミューズ的存在として人気を博している模様。

正直もっとエクストリームでとっつきにくい音を想像していたが、拍子抜けしそうなほどにキャッチーな音楽だと思う。

冒頭を飾る「Woe」でいきなりハートを鷲掴みにされてしまうが、M9「Poison」やラストの「Wildfire」も素晴らしい。

これから破竹の快進撃が期待できそうなアーティストだと思う。





2023年1月16日月曜日















 【今週の一枚】













Tim Bernardes - Mil Coisas Invisíveis [Psychic Hotline 2022]

ブラジルのバンドO TernoのメンバーTim Bernardesによる5年ぶりの2ndソロ。

「ティム」と表記されていることもあるが殆どが「チン・ベルナルデス」と書かれているので、おそらくこちらのほうが本来の発音に近いのだろう。

高い評価を得た1stアルバムに続くこの作品も多くの称賛を得たようだ。

Devendra BanhartやDavid Byrneらとのコラボレーションでも名高い彼だが、Fleet Foxesのアルバム「Shore」にもゲスト・ヴォーカルとして参加、2022年のUSツアーではオープニング・アクトに抜擢されている。

昨年傑作アルバムをリリースしたSilvana EstradaもAndrew BirdとIron &WineのWヘッドライナー・ツアーに帯同したりしていたし、インディーズの世界でも英語圏とラテン圏のアーティスト達の交流が盛んなのは素晴らしいと思う。

今作は2021年にサンパウロで制作され、全15曲収録で1時間近い大作でLPはダブル・アルバムとしてリリースされた。

Brian WilsonミーツCaetano Veloso、なんて形容は決して大袈裟ではないと思う。