2024年3月25日月曜日

沸騰











 

【今週の一枚】













Kim Gordon - The Collective [Matador 2024]

十年以上前にソニック・ユースが活動を停止したのちもバンドのベーシストであったKim Gordonが様々な活動をしていたのは知ってはいたものの、全くフォローしていなかった。

というのも個人的にこのヒトのヴォーカルが苦手で、ソニック・ユースの作品でも歌わなきゃイイのになあ、なんて実に失礼な感想を抱いていたりしたのだ。

で、今月になって御年70歳を迎えた彼女が2枚目となるソロ作を発表するという報に触れても、「ま、今回もスルーかな」なんて思ったりしていた。

ところがSNSやネット上に今作を激賞するコメントやレビューを次々と目にするにつけ、やっぱり聴いてみようという事になった次第である。

で、結論。これは紛れもない傑作だ。

ソロ一作目でもリズムのアプローチに軸足を置いていたようだが、今作においても念入りにプログラミングされたリズム・トラックは凄まじくクールだ。

インダストリアル・ノイズ・ミュージックとしての完成度はこのうえなく高く、スポークン・ワード・スタイルの彼女の歌唱もハマっている。

オープニングを飾る「BYE BYE」も素晴らしいが、ラスト二曲の「The Believers」から「Dream Dollar」は聴く度に血が沸騰するかのような興奮を覚えてしまう。

いやはや、古希を迎えた彼女だけれど、こんなにもプリミティブなエナジーに満ち溢れた作品を生み出してくれるとは。





2024年3月18日月曜日
















 【今週の一枚】













Erika De Casier - Still [4AD 2024]

ポルトガル生まれでデンマーク育ちのアーティストErika De Casierの3rdアルバムは前作に引き続き4ADレーベルからのリリースとなった。

NewJeansへの楽曲提供が大きな話題となった彼女、前作の発表以降もOvermonoやMura Masa等とのコラボレーションを実現させてきた。

今作においてもShygirlやBlood Orange、They Hate Changeといった面々がフィーチャーされている。

正直なところ、少々洗練され過ぎな印象があるのも否めないが決して退屈な音にはなっていない。

リード・シングルとなった「Lucky」などはヒットチャートを席捲してもおかしくない程に完成度の高いポップ・チューンだ。

今年のFUJIロックへの参戦が表明されている彼女、是非とも単独公演にも期待したい。





2024年3月12日火曜日

多岐













 【今週の一枚】













Kali Malone - All Life Long [Ideologic Organ 2024]

ストックホルムを拠点に活動する米国人アーティストKali Malone新作は自ら演奏するパイプオルガン、Macadam Ensembleによる合唱とAnima Brassのブラスクインテットの演奏によって構成され、収録時間78分の大作となっている。

2020年から2023年にかけて制作は進められ、最終的に12曲の楽曲にまとまられたようだ。

表題曲はオルガン・ヴァージョンと声楽ヴァージョン、「No Sun to Burn」はブラスとオルガン、といった具合に同じ楽曲を異なるアプローチで演奏した音源も含まれている。

大きな括りではポスト・クラシカルの範疇になるのだが、アンビエント・ドローン的なムードも感じられるし、荘厳な響きのサウンドなのに宗教色とは無縁に思える。

レコーディング場所は多岐にわたり声楽はフランス・ナントのチャペル、ブラスの演奏はNYのスタジオ、そしてオルガンはスイス、オランダ、スウェーデンで収録された模様。

オルガンの演奏には4種類のパイプ・オルガンが使用されているそうで、ただならぬ拘りが感じられる。

今作は彼女の公私にわたるパートナーStephen O'MalleyのレーベルIdeologic Organよりリリースされ、Stephenは演奏面でもサポートしている。







2024年3月4日月曜日

彗星

 











【今週の一枚】













Friko - Where we’ve been, Where we go from here [ATO Records 2024]

シカゴのインディー・シーンに彗星の如く現れたバンドのデビュー・アルバム。

FrikoはギタリストでヴォーカリストNiko KapetanとドラマーのBailey Minzenbergerの2名から編成されるデュオ。

その佇まいはごく自然体で、飾らない雰囲気がなんともクールだが、彼らの奏でる音楽の持つ破壊力は一筋縄ではなく、生み出されるカタルシスは格別なものであると断言できる。

シューゲイザーのシーンが盛り上がっていた頃の高揚感やエモのバンドが次々と傑作を生みだしていた時代を彷彿とさせる。

その異形なイメージはピクシーズが登場してきた時がこんな風だったのかな、と思わされたり。

自分達のテーマソングなんだ、という冒頭の「Where We’ve Been」からして実に感動的だが、轟音ギターがうなりをあげる5曲目の「Chemical」なんぞは聴くたんびに血沸き肉躍る思いがするし、8曲目の「Get Numb To It!」は所謂アンセムに成り得るトラックではないだろうか。

それにしても凄えのが出てきたな…。