2022年8月29日月曜日

十重奏










 

【今日の一枚】













Jasmine MyraHorizons [Gondwana Records 2022]

英国リーズを拠点に活動するサックス奏者Jasmine Myraのデビュー・アルバム。

彼女が率いるバンドは10名編成という大所帯で、そういう形態をテンテットと呼ぶというのを初めて知った。

一聴する分にはかなりオーセンティックかつスタンダードなジャズに聴こえるようで、どこか逸脱した印象もして聴いていてなんとも心地良い。

インスパイヤされたアーティストにBonoboやOlafur Arnalds、Moses Sumneyなどを挙げているようで、エレクトロニカやポスト・クラシカルからの影響も色濃いのかも。

M4「Words Left Unspoken」なんかに顕著だが、ジャズのフォーマットを採りつつ、「純粋に美しい音楽」を追求している姿勢が感じられる。

元々彼女はGondwana RecordsのオーナーMatthew Halsallにその才能を見出され、今作のプロデュースは彼が務めている。






2022年8月23日火曜日

ひとりじゃない











 

【今日の一枚】














Florist - Florist [Double Double Whammy 2022]

Emily A. Sprague率いるブルックリンのインディー・フォーク・バンドの3年振りの4thアルバム。

前作「Emily Alone」はバンド名義ではあるものの実質的にソロ・ワークだったワケだが、今作は2019年の夏にメンバー4人がHudson Valleyのコテージに集結、1か月にわたって共同生活を営みながら録り続けられた音源がベースとなっている模様。

全19曲1時間近い本作はM2「Red Bird Pt. 2 (Morning)」やM16「Dandelion」といったEmilyのフィンガーピッキングの弾き語りをメインにしたアンビエント・フォークは勿論の事、インストゥルメンタル作品も多く収録されており、全体の統一感も見事だ。

アレンジは本当に抑制的なのだけれど、M11「43」やM18「Feathers」などを聴くにつけバンド・サウンドの醍醐味を感じた次第。

2020年にソロとして初来日を予定していたEmilyだが、コロナ禍によりキャンセルとなっており、ようやく今年10月に長野で開催されるフェスに参加予定なのだそう。










2022年8月16日火曜日

溜息

 










【今日の一枚】

Dario Lessing - Frequency [Dario Lessing 2022]

ベルリンのプロデューサーにしてマルチ・プレイヤーのDario Lessingによるニュー・アルバム。

2019年にはDeutsche Grammophonから作品をリリースしていた彼だが、今作はセルフ・リリース。

実の妹であるShamsを始め豪州人James Chatburn、ニュージーランドのGraham Candy、米国人Stimulus、オーストリア人のRezar、そして同国人Marioという実に多彩な6人のゲストを迎えて制作されたようだ。

ベースにあるのはクラシカル・クロスオーバーになるのだろうがサウンドのほうもヴァリエイションに富んだ極上メランコリック・エレクトロ。

個人的にはJames Blakeにこういう音をやってもらいたいなあ、なんて感じてしまった。

それにしても溜息が出そうになる程のイケメンやな。








2022年8月8日月曜日

色々










 

【今日の一枚】














beabadoobee - Beatopia [Dirty Hit 2022]

フィリピンのIloilo City生れでロンドン育ちのBeatrice Kristi Lausによるbeabadoobeeのセカンド・アルバム。

そのエキセントリックな風貌と強烈な個性で注目を集める彼女だが、ソングライターとしてかなり本格派だ。

次から次へと繰り出されるキラー・チューンの数々はThe Primitivesの1989年の傑作セカンド・アルバム「Pure」なんかが連想されたりもしたし、作品を繰り返し聴くにつけ、往年のLushが目指そうとして最後まで辿り着けなかった境地に楽々と到達しているのではないか、なんて思わされたりもした。

ライブはオーソドックスなギター・バンドの編成だが、幾つかの演奏を動画で見た限りでは、かなりタイトな演奏ぶりで舌を巻かされた次第。

今月のサマー・ソニックで初来日を果たす模様。





2022年8月1日月曜日

ストイック









 

【今日の一枚】













Maria BC - Hyaline [Fear of Missing Out Records 2022]

オハイオ出身で現在カリフォルニア州オークランドを拠点に活動するフィメイルSSWのデビュー・アルバム。

基本的には殆どの楽曲がエレクトリック・ギター弾き語りのスタイルで儚げながらも強い意志を感じさせるメゾ・ソプラノのヴォーカルが印象的。

かなり抑制的なアレンジで、殆ど彼女一人で作り上げられたようだが、数少ないゲストのなかには彼女の父親が含まれておりオルガンで参加している模様。

浮遊感に溢れアトモスフェリックなムードに覆われた作風はTara Jane O'neilなんかも連想させられた。

ストイックとさえ言えそうな程に装飾を削ぎ落したスタイルでこんなにも濃密な音空間を現出するその力量に圧倒される。