2022年10月31日月曜日














 【今週の一枚】













Nick Hakim - Cometa [ATO 2022]

ブルックリンを拠点に活動するNick Hakimによる3rdアルバム。

2020年の2nd「Will This Make Me Good」のあと昨年はRoy Nathansonとのコラボ・アルバム「Small Things」をリリースしており、なかなかに旺盛な活動ぶりだ。

昨年4ADより傑作アルバムをリリースしたHelado NegroやDJ Dahl、大御所Arto Lindsayがゲスト参加している。

アルバムに先行してシングル・カットされたM2「Happen」には最近新作を発表したばかりのAlex Gがピアノを演奏している。

元々Nickはチリ人の母親とペルー人の父親のもとワシントンDCで生まれ育ったそうだが、そういった出自も彼のコスモポリタンな音楽性に大いに影響しているのだろう。

タイトルのCometaはスペイン語で「凧」という意味だそう。









2022年10月24日月曜日

ここに

















【今週の一枚】















サンフランシスコ生まれでオレゴン州ポートランドを拠点に活動するフィメイル・ギタリストのソロ名義としては6枚目のアルバム。
Sharon Van Ettenの'14年作「Are We There?」へのゲスト参加やTara Jane O'neilとのコラボレーションでも知られ、近年もDirty ThreeのドラマーJim Whiteとのコラボ作やギタリストWilliam Tylerとのデュオ作を発表している。
彼女の作品は数々の映像作品のサウンドトラックにもフィーチャーされており、本当に幅広い活動振りと言えるだろう。
アメリカン・ゴシック、ネオ・トラディショナル・フォーク、エレクトリック・カントリー・ブルース等々、彼女の音楽は多様な影響下に生み出されたものだが、とっつきにくさとは無縁で非常に親しみやすいものだと言えると思う。
冒頭を飾る「In Dark Water」のアルペジオとスライド・ ギターのサウンドには痺れさせられたし、締めの「Beat the Drum Slowly」も実に味わい深いが、個人的にはM6「The Crack Where the Light Gets In」がハイライト。
陳腐な言い方だが聴くたび希望と勇気を与えてくれるようなトラックだと思えた。
1970年生まれという事で同い年でもあり、これからも末永い活躍を期待したい。





2022年10月18日火曜日

元通り













 

【今週の一枚】














Alex G - God Save the Animals [Domino 2022]

フィラデルフィアのAlex GiannascoliことAlex Gによる9thアルバム。

同名女性アーティストとの混同を避ける為に(Sandy)を名前に冠していたAlex G、どうやら現在は元に戻して活動している模様。

元々宅録志向の彼、自宅で録りためた音源をネットに多数UPするスタイルで知られるが、今作はデモ音源をスタジオに持ち込み、バンド・メンバーとエンジニアを迎えて作りこまれたそうだ。

特に自身のボーカルについては何度も納得行くまで録り直し、その上で様々なエフェクトを施すという拘り様だったらしい。

Jessica Lea MayfieldやMolly Germerといったフィメイル・シンガーをゲストに迎えている曲もあるが、Alex G自身の声が曲によって変幻自在ともいうべきスタイルを取っており、非常に面白い。

アルバムのトータル・クオリティも申し分ないが、M5「No Bitterness」やM10「Immunity」、ラストの「Forgive」なんかは彼のキャリアを代表するトラックに成り得るのでは。

前作に引き続き今作のアートワークも彼の実のお姉さんが手掛けたそう。





2022年10月11日火曜日

ベイブ


















 【今週の一枚】













Babebee - Mind Over Matter [The Honeypot 2022]

Babebeeはアトランタを拠点に活動する弱冠20歳のSSW、プロデューサー、パフォーマーで今作がデビュー・アルバム。

インスパイヤされたアーティストにImogen Heap、Björk、The xx、Frank Ocean、Charli XCX等を挙げているらしく、このラインナップを見るだけで、俄然興味が沸いてしまったが、肝心の音のほうも期待以上だった。

メロディ・メイカーとしての才能も抜きんでていると思うが、トラック・メイカーとしても特筆すべきセンスを兼ね備えている。

本人はもともと音楽で生計を立てる事を想定していなかったそうだが、コロナ禍の2020年にAbletonというツールを使って音源制作を始め、ネット上で様々なアーティストと交流しつつ本作を完成に漕ぎ付けたそうだ。

逆に言えばパンデミックが産み落とした新たな才能という事なのだろう。

ここにまた一枚、ベッド・ルーム・ポップの逸品が。







2022年10月3日月曜日

放熱

















 【今週の一枚】













Sadurn - Radiator [Run For Cover 2022]

フィラデルフィアの4人組Sadurnのデビュー・アルバム。

バンドはリード・シンガーGenevieve DeGrootのソロ・プロジェクトとして活動を開始し、ギタリストのJon Coxが加わってデュオとなり、のちにドラマーのAmelia SwainとベーシストのTabitha Ahnertが加わって現在のラインナップになったようだ。

影響を受けたアーティストにJason Molina、Gillian WelchにAlex G、Elliott Smith等を挙げていて、この面子を見るだけで、聴く前から良くないワケが無い、と確信させられてしまった。

ミニマルなアレンジの枯れ系エモ・フォーク、という括りになるのだろうけど、陰鬱な印象とは無縁で、ポジティブで希望に満ちたサウンドが展開されている。

どこまでも素朴で簡素な音楽だが、しみじみメロディの良さを堪能させてくれる好盤だと思う。