2023年7月31日月曜日

勘違い
























 【今週の一枚】













Lauren Auder - the infinite spine [True Panther Records 2023]

アートワーク見ててっきり耽美派ゴス系の女性アーティストかと思い込んで聴き始めたら野太いバリトン・ヴォイスで吃驚。

Lauren Auderはロンドンを拠点に活動する25歳のシンガー・ソングライター、プロデューサーで今作がデビュー・アルバム。

英国Watford生まれで幼少期を南仏Albiで過ごした経歴の持ち主であり、両親は音楽ジャーナリストで父親がKerrang!、母親がNMEに勤務していたそうだ。

なんだか浮世離れした音楽性を連想していまうビジュアル・イメージだけれど、オーセンティックなバロック・ポップであり、その歌唱スタイルからオーケストラル&シアトリカル・エモという形容も出来るように思える。
そのエネルギッシュ極まりない咆哮は去年衝撃的なデビュー作をリリースしたBrakenceことRandy Findellにも引けを取らないレベルと感じたし、CursiveやThe Good Lifeで活動するTim Kasherなんかを連想させられたりもした。
このスケール感溢れる壮大なサウンド、ライブではどう再現するのか想像するのも愉しい。



2023年7月24日月曜日

トロピカリア











 

【今週の一枚】













Ítallo - Tarde no Walkiria [LAB 344 2023]

もし将来2023年の夏は暑かったなあ、と思い返す事があったとしたら、その時の脳内BGMはこのアルバムだと思う。

ブラジル、アラゴアスのアーティストÍtalloことÍtallo Françaの3rdアルバム。

ジャジーなピアノの響きが印象的なオープニングの「Jangadeiros Alagoanos」から実験色の強いタイトル・トラック「Tarde no Walkiria」への流れで一気に作品にひきこまれていくかのような感覚を覚えるが、アルバム全体を通じてソング・ライティングの妙を堪能出来る作品だ。

極上ローファイ・トロピカリアの世界を堪能出来る逸品と言えるだろう。

今作はリオのレーベルLAB 344への移籍第一弾で、Paulo Francoをはじめとした様々なアーティストがゲスト参加。

なんとも味のあるアートワークはNathalia Bezerraによって撮影された写真をもとにÍtallo本人によって手掛けられた模様。







2023年7月18日火曜日

いたみ

 










【今週の一枚】













Lloyd Cole - On Pain [Earmusic 2023]

Lloyd Cole and the Commotionsが最初のアルバム「Rattlesnakes」をリリースしたのは1984年の事なので、彼のミュージシャンとしてのキャリアは40年近くに及ぶ。

1990年にソロ転向後も安定した活動振りでLloyd Cole and the Negatives名義の作品を含め十数枚の作品を世に問うてきた。

かなりエレクトロ寄りの作風に転じた時期もあったり、息子との共作アルバムをリリースしたりもして、そろそろ隠居モードなのかな、なんて思ったりした事もあったけど、なんのなんの。

今作で聴く事の出来る彼の若々しくも艶っぽく深みのある色気をまとったヴォーカルの素晴らしい事といったら。

元々若いころから渋い声質の持ち主だったけど、こういう人に限って声が年を取らない典型のような気がする。

Aimee Mannなんかにも言えると思うけど、特にセールスを追求するワケでなく、ただ自分のやりたい音楽を自分のペースで作り続けているアティチュードは本当に素晴らしいと思える。

今作はChris Merrick Hughesがプロデューサーを務め、the Commotionsの創設メンバーBlair CowanとNeil Clarkが4曲の楽曲を共作している。






2023年7月10日月曜日

飄々
















 【今週の一枚】













This Is the Kit - Careful of Your Keepers [Rough Trade 2023]

パリを拠点に活動する英国人フィメイルSSW、Kate StablesによるプロジェクトThis Is The Kitの3年ぶりの6thアルバム。

Super Furry AnimalsのGruff Rhysがプロデューサーをつとめ、作品にも参加している。

これまでもJohn ParishやThe NationalのAaron Dessnerらが彼女の作品のプロデュースを手掛けており、所謂玄人に愛されるミュージシャンなのだろう。

今作においてもケルト・テイストのコンテンポラリー・フォークは健在で、そのヴェルベット・ヴォイスを堪能出来る仕上がり。

なんだか飄々としていながらも力強さを感じさせる音楽だ。

これまでの作品でもユニークなアートワークで楽しませてくれてきていたが、今作はぐっと大人っぽい雰囲気に。

ちょっとべス・オートンなんかが想起させられたり。

前作に引き続きRough Tradeレーベルからのリリース。






2023年7月3日月曜日

漆黒











 

【今週の一枚】













Kimbra - A Reckoning [Kimbra 2023]

ニュージーランドのフィメイルSSW、Kimbraの5年ぶりの4thアルバム。

1stアルバム「Vows」での鮮烈なデビュー、そしてGotyeとの「Somebody That I Used to Know」の世界的なヒットからもう10年以上経っているのかと思うと感慨深い。

それにしても強烈な印象を残すアートワークだ。

ダークでダウナーで陰鬱、何かに怒りを覚えているような眼差しが捉えられている。

元々ポップでカラフルなイメージをまといつつ、どこか陰を感じさせるアーティストだったが、アルバム全体を覆う空気もどこか重苦しい。

まあただ暗いだけの作品ではなく細部に聴きどころを散りばめているあたりは流石の手腕と言えると思う。

共同プロデュースを務めたSon LuxのRyan Lottの影響も少なからずあるのだろう。

今作はメジャー・レーベルからではなくセルフ・リリースとなっている。