2023年9月25日月曜日

Saudade









 

【今週の一枚】













MARO - hortelã [SECCA Records 2023]

ポルトガル・リスボン出身のSSWマルチ・インストゥルメンタリストMAROことMariana  Seccaによる7thアルバム。

2017年に名門バークリー音楽大学を卒業した才媛で、母国ポルトガルのみならずロサンゼルスやブラジル等で精力的に活動している。

これまでにJacob CollierやOdesza等とのコラボレーションも実現している彼女、母国代表としてEurovision Song Contest 2022にも出場した模様。

今作は友人である二人のギタリストDarío BarrosoとPau Figueresを迎えて制作され、ビートや装飾音を排した完全なアコースティック・アルバムで、現在3人はトリオとしてツアー中らしい。

収録全10曲中2曲が英語詞で残りは全て母国語で歌われているが、兎に角魅力的な、所謂サウダージを感じさせる声だ。

奇しくも前述のEurovision出場のきっかけとなったのが「saudade, saudade」という楽曲だそう。










2023年9月19日火曜日

醍醐味










 

【今週の一枚】













James Blake - Playing Robots Into Heaven [Polydor 2023]

セルフ・タイトルの1stアルバムで鮮烈すぎるデビューを果たして12年、James Blakeが2年ぶりの6thアルバムをリリースした。

当初よりトラック・メイカーとして抜きんでた才能を遺憾なく発揮してきた彼だが、今作においては初期インディー時代を彷彿させるかのようなアンダーグラウンドなダンス・フロア寄りのサウンドにシフトしている印象で、それが好結果に繋がっていると感じられた。

今夏のソニックマニアで来日し、大阪では単独公演も敢行し、大いに好評を博した彼だが、2017年の東京国際フォーラムでのライブは個人的に今まで観てきたなかでも最も感動的なパフォーマンスの内のひとつに挙げられる。

ライブにおいても前衛的な電子音と繊細かつ流麗なメロディとの対比が彼の音楽の醍醐味と言えるだろうが、今回の作品においても絶妙なバランスで混交している。

アルバム随所に聴きドコロが散りばめられた作品だが、エンディングのタイトル・トラックの素朴な調べが、何故かやたらに強く心に残る。






2023年9月11日月曜日

爛漫
















 【今週の一枚】













Joanna Sternberg - I've Got Me [Fat Possum Records 2023]

Joanna Sternbergはマンハッタンを拠点に活動するフィメイルSSWにしてマルチ・インストゥルメンタリスト、ヴィジュアル・アーティストで今作がセカンド・アルバム。

2019年の1st「Then I Try Some More」は最初Conor OberstのレーベルTeam Love Recordsよりリリースされたが、Fat Possum Recordsより再発され、今作は同レーベルからのリリース。

オルタナ・カントリーというジャンルが定着してもう随分と時間が経っているし、Gillian Welchを筆頭に数多のアーティストが真正アメリカーナを手掛けた作品を世に問うてきているワケだけれど、このJoanna Sternbergはかなり強烈な個性を感じさせてくれる。

何十年も前に作られたフォーク・アルバムなんですよ、と言われて聴かされても信じてしまいそうな程にタイムレスな音楽性だ。

Rickie Lee Jonesを彷彿させるような歌声も印象的だが、その佇まいが天真爛漫で、その天然ぶりはどこかDaniel Johnstonあたりに通ずるトコロも。

Matt Sweeneyがプロデュースを手掛けた事でも話題を呼んだようだが、7曲目の「Stockholm Syndrome」が突出して素晴らしい。

何の変哲も無い、極めてシンプルな弾き語りの小品でありながら、こんなにも胸に響き渡る曲を作り出してくれた事に心から感謝したくなってしまう。


2023年9月4日月曜日

矢野さん

 










【今週の一枚】













Jonah Yano - Portrait Of A Dog [Innovative Leisure 2023]

広島生まれで幼少のころカナダに移住し、トロントを拠点に活動する日系SSW、Jonah Yanoによるセカンド・フル・アルバム。

ラスト・トラックのみカナダのジャズ・バンドBADBADNOTGOODと連名のクレジットとなっているが、実際にはすべての楽曲でアレンジ、演奏を手掛けており、実質的には共作と言って差し支えないと思う。

ジャジーで瀟洒なサウンドに、繊細でフェミニンなヴォーカルが乗るスタイルの音楽だが、決して軽い印象は与えておらず、むしろエモーショナルな作品ではないだろうか。

タイトル・トラック「Portrait Of A Dog」や2曲目の「Always」あたりのメロディのクオリティが突出しているが、ラスト前の「Song About The Family House」のアコースティック・フォークは実に美しいし、ラストの「The Ordinary Is Ordinary Because It Ordinarily Repeats」の迫力あるジャズ・サウンドも実に味わい深い。

Jonah Yanoは来月初の来日を果たし、全国6か所で7回の公演を予定している模様。