2023年5月29日月曜日
















 【今週の一枚】













JFDR - Museum [Houndstooth 2023]

アイスランド、レイキャビクのアーティストJófríður Ákadóttir(ヨフリヅル・アウカドッティル)のソロ・プロジェクトJFDRの3rdアルバム。

双子のÁsthildurと姉妹で結成したバンドPascal Pinonでシーンに登場した時はまだ14歳だったというのにも驚かされるがそれから十数年の間に様々な形で12枚のアルバムをリリース、数々の著名アーティストとコラボレーションしている。

直近でいうとOlafur Arnaldsの「Back To The Sky」の客演が挙げられるだろうが、これは本当に感動的な作品だった。

JDFR名義では2020年の「New Dreams」以来3年ぶりの今作、レーベルもKrunkからHoundstoothへ移籍している。

まあこのヒトは大きく外す事はないだろうなと思いつつ聴き始めてみたが、やはりこちらの期待通りの全編にわたって極上のメランコリック・ワールドが展開されている。

先行してリリースされたオープニング・トラック「The Orchid」、それに続く「Life Man」、「Spectator」と冒頭の3曲からして掴みは完璧だが、唯一のインsトゥルメンタル「Flower Bridge」も驚くほどに美しいし、終盤のM8「February」も泣かせてくれる。

Ólafur Arnaldsと一緒に来日してくれたりはせんモンだろうか。










2023年5月22日月曜日

Brothers

 



【今週の一枚】













Overmono - Good Lies [XL Recordings 2023

ウェールズ出身で現在はロンドンを拠点に活動するTomとEd Russellによる兄弟デュオOvermonoの1stアルバム。

2016年にXL RecordingsよりEP「Arla」を発表して以降、数々の音源を発表し、Four TetやThom Yorke、Ed Sheeranといった大物アーティストのリミックスも手掛けてきた彼等の待望のフルレングスである。

Smerzのヴォーカルをサンプリングしたタイトル・トラック「Good Lies」をはじめコロンビアのネオ・ソウルSSW、St Pantherをフィーチャーした「Walk Thru Water」、本作のティザー・トラックとなった「Is U」、クラブ・シーンで大きな反響を生んだ「So U Kno」といった調子でキラー・チューン目白押しといった印象。

トラック・メイカーとしての先鋭性が称賛を集める彼等だが、自分達の作るのは「車で聴くための音楽だ」なんて嘯いていたりもして、そのアティチュードも実にクールだし、彼等の音楽がポップ・ミュージックとして高い完成度を誇っている事の証左だと思える。

ちなみにアートワークのドーベルマンは友人が飼っているそう。

彼等は今夏のフジ・ロックで来日予定だそうで、もし都内で単独公演が催されるとしたら是非足を運んでみたい。






2023年5月15日月曜日

Grotesque











 

【今週の一枚】













Fever Ray - Radical Romantics [Rabid Records 2023]

Karin Dreijerのソロ・プロジェクトFever Rayの3rdアルバム。

まあこの方の露悪趣味みたいな傾向は今に始まった事ではなにしても、それにしてもあんまりと言えばあんまりなアートワーク。

こういうセンスが良いというファンも一定数居るとは想定されるけど、正直付いていけん。

暴走気味のビジュアルに対し音のほうはというと、今までの作品のなかでも一番聴きやすく仕上げられている印象。

変態ストレンジ・ダンス・ミュージックの要素も残されているものの、かなり耳障りの良いダーク・エレクトロ・ポップだと思えた。

先行シングルとなったオープニングの「What They Call Us」もそうだしM7「Carbon Dioxide」なんかも実に完成度の高いポップ・ソングと言えるだろう。

今作の製作には兄のOlof Dreijerも参加しているがNine inch NailsのTrent Reznorがその名を連ねているのも注目される。





2023年5月8日月曜日

天象儀










 

【今週の一枚】













Daughter - Stereo Mind Game [4AD 2023]

英国のインディー・トリオDaughterの3rdアルバム。

2015年の2nd「Not To Disappear」以降、サウンド・トラック作品「Music From Before the Storm」やElena Tonraのソロ・プロジェクトEx:Reのアルバムが発表されたりしていたとはいえ、8年近くの時間が経過していた事に少々驚かされる。

耽美派インディー・レーベルの象徴的な存在だった4ADも時代の変遷に伴い、かなりサウンドのレンジが幅広くなり多様性を持つレーベルに変貌してきたワケだけれど、このDaughterは往年の4ADのレーベル・イメージに近しい存在だと思える。

ドリーム・ポップ、シューゲイザーの系譜に連なっているようにも感じられるし、スロウ・コア、サッド・コアの影響も見え隠れする音楽と言えるだろう。

今作ではロンドンの弦楽団12 Ensembleのオーケストレーションを大々的にフィーチャー、その幻想的で幽玄な音楽性に彩を添えている。

作品の発売に先立ち渋谷のプラネタリウムで試聴会が開催されたらしく、自分は聴きにいけなかったけど、さぞや素敵な体験だったのではないだろうか。









2023年5月1日月曜日

衰え知らず

 











【今週の一枚】













Alfa Mist - Variables [Anti- 2023]

イースト・ロンドン出身のAlfa Mistによる5thアルバムはAnti-レーベル移籍第二弾となった。

様々な才能が鎬を削る新世代のUKジャズ・シーンにおいて強烈な存在感を放ち、Jordan RakeiやYussef Dayes、Tom Misch等とのコラボレーションでも名高い彼だが、その勢いが衰え知らずなのを実感させてくれる作品に仕上がっている。

冒頭のハード・バップ調の「Foreword」で一気に作品に引き込まれていくような感覚になるが、Kaya Thomas-Dykeが蠱惑的な唄を聴かせてくれる優美なM3「Aged Eyes」あたりも味わい深い。

ヴィジュアル・アーティストとしても活動する彼女は今作も含め、これまでの彼の作品の全てのアートワークを手掛けているのだとか。

作品の最後を飾るM9「4th Feb (Stay Awake)」からラストの「BC」にかけての流れは文字通り作品のクライマックスでありハイライトと言えるだろう。

6月には再来日公演が予定されている模様。