2022年2月28日月曜日

歪み
















 【今日の一枚】













Spoon - Lucifer On The Sofa [Matador 2022]

結成は1993年の終わり頃というから既に30年近い歴史を誇るテキサス州のオースティンのSpoon、5年振りとなる10thアルバム。

個人的には2005年の「Gimme Fiction」からリアルタイムで追いかけてきたが、作品ごとのクオリティのブレが少なく非常に安定しているバンドという印象が強く、今作においてもその認識は変わらない。

とにかく演奏がソリッド&タイトなうえ、Britt Danielのヴォーカルも全く衰え知らずで冴え渡っているが、シャウトするときの独特な「歪み」はロック・ヴォーカリストとして大きな強みになっていると実感させられる。

まるでレコーディング・セッションを同じ部屋で聴いているかのような臨場感に溢れ生々しい音はかなり意図的にライブ感を強調してサウンド・メイキングされたようだ。

先行リリースされたM2「The Hardest Cut」やそれに続くシングルM4「Wild」も素晴らしいが、エンディングを飾るタイトル・トラックM10「Lucifer On The Sofa」にも大いに感銘を受けた。





2022年2月21日月曜日

Decade

















 【今日の一枚】













Moonchild - Starfruit [Tru Thoughts 2022]

LAのトリオMoonchildが結成十周年という節目に完成させた5thアルバム。

メロウなうっとり系ジャジー・ポップでは当代随一ともいうべきポジションを確立している彼等だが、今作においては数々のアーティストをフィーチャー。

Donny Hathawayの娘Lalah HathawayやThe Isley Brothersの血統に連なるAlex IsleyをはじめTank and The BangasRapsodyIll CamilleMumu FreshChantae Cannといった豪華な顔ぶれだ。

そんななかでもフィメイル・ラッパー達との絡みが実に印象深く、ネオソウル、R&Bとヒップホップの掛け合わせ、というのは特段珍しくはないにしても、どの曲も全く違和感無くハマりまくっている。

コロナ禍で中止になってしまった2020年5月の来日公演の仕切り直し、是非とも実現させて頂きたいものだ。







2022年2月14日月曜日

滋味











 

【今日の一枚】













Jana Horn - Optimism [No Quarter 2022]

どちらかというと地味で渋い音を好んで聴くほうだとは思うのだけど、ちょっと聴いて「これは流石に地味渋過ぎるだろ」と思ってリピートしなかったのが、評判が良いので「やっぱちゃんと聴いてみるか」と聴きはじめ、繰り返すうちに「やっぱコレいいわ」なんて事になるパターンは少なくなかったりする。

このテキサス州オースティンのフィメイルSSW、Jana Hornの1stソロなんかは正にそんな感じだ。

2020年にセルフ・リリースしていたのをフィラデルフィアのNo Quarterレーベルが今年再販という経緯のようだ。

Jana自身もメンバーとして参加するKnife on the Waterのメンバーを中心にオースティンの音楽仲間がバックをつとめ制作が進められた模様。

Raymond Carverの文学に心酔し、Leonard Cohenから多大な影響を受けたそうだが、聴きこむ程に装飾を削ぎ落したミニマリスト的なアプローチが染み渡ってくる。





2022年2月7日月曜日

おお、友









 

【今日の一枚】













Bonobo - Fragments [Ninja Tune 2022]

英ブライトン出身で現在LAを拠点に活動するBonoboことSimon Greenの5年振りの7thアルバム。

オープニングの「Polyghost」の美麗なハープの響きが印象的だが、Jamila WoodsをフィーチャーしたM5「Tides」においてもハープの音色が効果的に使用されている。

ブルガリアの合唱団のコーラスをサンプリングした「Otomo」は大友克洋にインスパイヤされたものだそうだ。

先行リリースされたM3「Rosewood」やレーベルメイトのJordan Rakeiをゲスト・ヴォーカルに迎えたM2「Shadows」も素晴らしいけど、個人的にはM8「Age of Phase」が今作の白眉だと思える。

アートワークは今回もNeil Krugが担当した模様。