2024年5月2日木曜日

 











【今週の一枚】













Arms and Sleepers - What Tomorrow Brings [Pelagic 2024]

ボストンで2006年に結成され現在はベルリンを拠点に活動するArms and Sleepersによる14枚目のフル・レングス。

元々Max Lewisとのデュオとして活動していたが、現在はMirza Ramicのソロ・プロジェクトとなっている模様。

これまで14枚のアルバムに加え20枚ものEPをリリースしているというのだから、かなり多作の部類に入るのではないだろうか。

今作のトラック・リストを見てみると全17曲収録されているうち最初の5曲、次に4曲・4曲・4曲という並びになっており、1枚のアルバムでありながら4部作とも言える構成となっている。

多様ななエレクトロニック・ミュージックの影響下にあると言えるArms and Sleepersだが、そのサウンドに一貫しているのはメランコリーを追求する姿勢であり、今作でもそのスタイルは全くブレていない。

Sofia Insuaをフィーチャーした「Belfast」はアルバムのハイライトの一つになっているが、同曲はケネス・ブラナー出演の同名映画にインスピレーションを得て制作されたものなのだとか。










2024年4月22日月曜日











 

【今週の一枚】













Four Tet - Three [Text Records 2024]

ロンドンのKieran Hebdenによるソロ・プロジェクトFour Tetの4年ぶりの12thアルバム。

Fred again..やSkrillexとのコラボレーションでメジャー・シーンでも注目を集めたFour Tetだが、その創造意欲の充実ぶりをひしひしと実感させてくれる作品に仕上がっている。

オープニングの「Loved」からエンディングの「Three Drums」に至るまでの全8曲45分の至福の音楽体験を提供してくれる今作だが、なかでも4曲目の「Daydream Repeat」は彼のキャリアを通じても屈指の名曲のひとつと言えるのではないだろうか。

奇しくも彼は先週金曜日に静岡で開催されたRainbow Disco Clubに出演するため来日しており、その流れで昨日渋谷のWOMBで19時から23時間までたったひとりで4時間にわたるDJプレイを披露したようで余程行こうかと思ったりもしたのだけど、お爺さんなので4時間立ちっぱなしは流石にキツ過ぎる、と断念した次第。





2024年4月16日火曜日

回帰















 【今週の一枚】













Diane Birch - Flying On Abraham [Legere Recordings 2024]

ミシガン生まれのフィメイルSSW、Diane Birchの11年ぶりとなる3rdアルバム。

2013年の2nd「Speak A Little Louder」には非常に深く感銘を受け、当時愛聴したものだったが、その後彼女が青春時代に深く影響を受けたニュー・ウェーブのバンドのカヴァー集「The Velveteen Age」を発見したり、先鋭的なミニ・アルバム「Nous」もフォローしていたが、待望の新作のリリースに心躍る思いだ。

10年を超える年月の間に彼女自身様々な音楽性を模索してきた事は想像に難くないが、結果的にバック・トゥ・ルーツ、バック・トゥ・ベーシックというべきスタイルに回帰している。

デビュー作を発表する前にはビバリーヒルズのラウンジでソウル・ミュージックの名曲やオリジナル曲をピアノ弾き語りで歌っていた経歴を持つ彼女が模索の末に辿り着いた音楽がこの作品に詰め込まれていると言えるだろう。

7月にはブルーノート東京で3日間にわたる来日公演を予定しているらしく、今作の音楽性が会場の雰囲気にとても似つかわしく思え、今から楽しみにしている次第だ。









2024年4月8日月曜日

10











 

【今週の一枚】













1010Benja - Ten Total [Three Six Zero Recordings 2024]

1010BenjaはKansas Cityをベースに活動するBenjamin Lymanによるソロ・プロジェクトで今作がデビュー・アルバム。

2018年にリリースしたEP「Wind up Space」で大きな注目を集めたようだが、それから6年の月日を経て今作の完成に漕ぎ付けた模様。

オープニング・トラック「Looking Out」の壮大なオーケストレーション・サウンドにのっけから衝撃を受けるが、それに絡んでいくBenjaminのヴォイス・パフォーマンスが途轍もなくクールだ。

続く「Peacekeeper」は先行シングルとしてカットされ、怒涛のラップに圧倒される。

作品全体を通じてサウンド・コラージュのセンスがズバ抜けている印象だが、ソウル・ミュージックとしての完成度の高さも際立っているように感じる。

ヒップ・ホップの文脈で言っても大概のスタイルが出尽くしているように感じていたが、今作には並々ならぬ革新性を感じた次第だ。

全10曲、収録時間は30分強と短尺ながら、非常に濃密な音楽体験が出来る一枚と言えるのでは。




2024年4月1日月曜日

逸脱











 

【今週の一枚】













Juila Holter - Something in the Room She Moves [Domino 2024]

LAをベースに活動するJuila Holterによる6年ぶりとなる6枚目のアルバム。

前作「Aviary」を発表後は映画のサウンドトラックを手掛けたり、カレッジで音楽の講義を受け持ったりと様々な活動に携わっていた模様。

音響派の括りにカテゴライズされたり、アート・ポップといった形容やフリージャズやアンビエント・ミュージックからの影響も指摘される事の多い彼女の音楽だが、確固たる独自性を確立しているのは紛れもない事実だ。

今作においてはフレットレス・ベースのサウンドが特徴的だが、一時期のケイト・ブッシュの作品の影響を大きく受けていると本人も認めている。

アルバム・タイトルはThe Beatlesの楽曲「Something」の歌詞「Something in the way she moves」から着想したようでドキュメンタリー「Get Back」を観ていてひらめいたそう。

コロナ禍のなかで彼女は出産を経験しており、その事も今作の大きなインスピレーションとなっているようだ。

それにしても彼女のような独創性溢れるアーティストは往々にして難解でマニアックなサウンドの沼にはまりこみがちだと思うが、ポップ・ミュージックの枠組みから大きく逸脱することなくオリジナリティに満ちた大衆音楽を成立させている手腕は実に見事だと思う。





2024年3月25日月曜日

沸騰











 

【今週の一枚】













Kim Gordon - The Collective [Matador 2024]

十年以上前にソニック・ユースが活動を停止したのちもバンドのベーシストであったKim Gordonが様々な活動をしていたのは知ってはいたものの、全くフォローしていなかった。

というのも個人的にこのヒトのヴォーカルが苦手で、ソニック・ユースの作品でも歌わなきゃイイのになあ、なんて実に失礼な感想を抱いていたりしたのだ。

で、今月になって御年70歳を迎えた彼女が2枚目となるソロ作を発表するという報に触れても、「ま、今回もスルーかな」なんて思ったりしていた。

ところがSNSやネット上に今作を激賞するコメントやレビューを次々と目にするにつけ、やっぱり聴いてみようという事になった次第である。

で、結論。これは紛れもない傑作だ。

ソロ一作目でもリズムのアプローチに軸足を置いていたようだが、今作においても念入りにプログラミングされたリズム・トラックは凄まじくクールだ。

インダストリアル・ノイズ・ミュージックとしての完成度はこのうえなく高く、スポークン・ワード・スタイルの彼女の歌唱もハマっている。

オープニングを飾る「BYE BYE」も素晴らしいが、ラスト二曲の「The Believers」から「Dream Dollar」は聴く度に血が沸騰するかのような興奮を覚えてしまう。

いやはや、古希を迎えた彼女だけれど、こんなにもプリミティブなエナジーに満ち溢れた作品を生み出してくれるとは。





2024年3月18日月曜日
















 【今週の一枚】













Erika De Casier - Still [4AD 2024]

ポルトガル生まれでデンマーク育ちのアーティストErika De Casierの3rdアルバムは前作に引き続き4ADレーベルからのリリースとなった。

NewJeansへの楽曲提供が大きな話題となった彼女、前作の発表以降もOvermonoやMura Masa等とのコラボレーションを実現させてきた。

今作においてもShygirlやBlood Orange、They Hate Changeといった面々がフィーチャーされている。

正直なところ、少々洗練され過ぎな印象があるのも否めないが決して退屈な音にはなっていない。

リード・シングルとなった「Lucky」などはヒットチャートを席捲してもおかしくない程に完成度の高いポップ・チューンだ。

今年のFUJIロックへの参戦が表明されている彼女、是非とも単独公演にも期待したい。





2024年3月12日火曜日

多岐













 【今週の一枚】













Kali Malone - All Life Long [Ideologic Organ 2024]

ストックホルムを拠点に活動する米国人アーティストKali Malone新作は自ら演奏するパイプオルガン、Macadam Ensembleによる合唱とAnima Brassのブラスクインテットの演奏によって構成され、収録時間78分の大作となっている。

2020年から2023年にかけて制作は進められ、最終的に12曲の楽曲にまとまられたようだ。

表題曲はオルガン・ヴァージョンと声楽ヴァージョン、「No Sun to Burn」はブラスとオルガン、といった具合に同じ楽曲を異なるアプローチで演奏した音源も含まれている。

大きな括りではポスト・クラシカルの範疇になるのだが、アンビエント・ドローン的なムードも感じられるし、荘厳な響きのサウンドなのに宗教色とは無縁に思える。

レコーディング場所は多岐にわたり声楽はフランス・ナントのチャペル、ブラスの演奏はNYのスタジオ、そしてオルガンはスイス、オランダ、スウェーデンで収録された模様。

オルガンの演奏には4種類のパイプ・オルガンが使用されているそうで、ただならぬ拘りが感じられる。

今作は彼女の公私にわたるパートナーStephen O'MalleyのレーベルIdeologic Organよりリリースされ、Stephenは演奏面でもサポートしている。







2024年3月4日月曜日

彗星

 











【今週の一枚】













Friko - Where we’ve been, Where we go from here [ATO Records 2024]

シカゴのインディー・シーンに彗星の如く現れたバンドのデビュー・アルバム。

FrikoはギタリストでヴォーカリストNiko KapetanとドラマーのBailey Minzenbergerの2名から編成されるデュオ。

その佇まいはごく自然体で、飾らない雰囲気がなんともクールだが、彼らの奏でる音楽の持つ破壊力は一筋縄ではなく、生み出されるカタルシスは格別なものであると断言できる。

シューゲイザーのシーンが盛り上がっていた頃の高揚感やエモのバンドが次々と傑作を生みだしていた時代を彷彿とさせる。

その異形なイメージはピクシーズが登場してきた時がこんな風だったのかな、と思わされたり。

自分達のテーマソングなんだ、という冒頭の「Where We’ve Been」からして実に感動的だが、轟音ギターがうなりをあげる5曲目の「Chemical」なんぞは聴くたんびに血沸き肉躍る思いがするし、8曲目の「Get Numb To It!」は所謂アンセムに成り得るトラックではないだろうか。

それにしても凄えのが出てきたな…。







2024年2月26日月曜日

ガールフレンド















 【今週の一枚】













Madi Diaz - Weird Faith [ANTI- 2024]

ナッシュヴィルを拠点に活動するフィメイルSSWの3年ぶりの6thアルバム。

出世作となった前作「History Of A Feeling」でANTI-レーベルに移籍した彼女、今作も引き続き同レーベルからのリリースとなっている。

Waxahatcheeや Angel Olsenのツアー・サポート・アクトを務めて来た経験もあるMadi Diazだが、昨年のHarry Stylesの北米ツアーの前座に抜擢された事でより一層注目を集める存在となったようだ。

ところでMatthew Sweetの1991年の傑作アルバム「Girlfriend」の表題曲は90年代屈指の名曲のひとつに挙げられるが今作の3曲目の同名曲も驚く程に素晴らしい。

彼女の声質は清楚で可憐な印象のものだが、歌われる内容はシリアスで刺激的なものが少なくなく、そのギャップが却って凄味を増す結果を生んでいると思う。

10曲目の「KFM」なんかはその典型というべき楽曲だが、共同作曲者としてJenny Owen Youngsがクレジットされているのにも驚かされた。

また8曲目の「Don't Do Me Good」はKacey Musgravesとの共演曲となっており、実力派アーティストからの信望が厚い事が窺える。

自身のポートレイトを採用したアートワークもとても魅力的だと思える。






2024年2月20日火曜日

密かに














 【今週の一枚】













Helado Negro - Phasor [4AD 2024]

2021年の前作「Far In」が好評を博したHelado Negroの4AD移籍第二弾となる8thアルバム。

イリノイ大学でSalvatore MatiranoのSAL-MARシンセサイザーを見学したした事が今作のインスピレーションとなった模様。

冒頭のリード・トラック「LFO」の奇妙な疾走感に面食らいつつも聴き込む程に魅了されるし、8曲目の「Wish You Could Be Here」はモンド・ポップの逸品と呼べる楽曲だと思う。

前作を聴いたときも感じたことだけど、このヒトの作品を4ADレーベルがリリースしている事がかのレーベルの多様性の象徴というべき事実とは言えないだろうか。

今年は来日があるのではないかと密かに期待している。






2024年2月13日火曜日

水の中











 

【今週の一枚】














Katy Kirby - Blue Raspberry [Anti- 2024]

2021年の1stアルバム「Cool Dry Place」が好評を博したテキサスのフィメイルSSW、Katy Kirbyの3年ぶりの2ndアルバムはANTIレーベルへの移籍第一弾となった。

何と言っても先行して公開されたリード・トラック「Cubic Zirconia」が突出して素晴らしい。

中盤のM6「Drop Dead」からM7「Party of the Century」にかけての流れも味わい深いし、続くM8「Alexandria」は重厚感溢れるサウンドで異彩を放っている。

グランジ感のあるノイジーなギターのストロークで歌われるラスト・トラック「Table」の飾らない雰囲気も好印象だ。

フィービー・ブリージャーズなんかが引き合いに出されたりしているが、ソロ転向後のエイミー・マンなんかも近しい雰囲気を感じさせられた。

それにしてもこれまた水面アルバムなんだよなあ。






2024年2月5日月曜日

立証














 【今週の一枚】













Cleo Sol - Gold & Heaven [Forever Living Originals 2023]

UKのシンガーCleo Solは昨年の9月に2枚のアルバムを連続してリリースした。

先に出した「Heaven」が30分、その2週間後に発表された「Gold」が42分の収録時間なので、一枚にまとめてもそんなに長い作品にはならなったところを敢えて2枚に分けたのは何らかの明確な意図があっての事だろう。

2021年の2nd「Mother」が非常に高い評価を受けており、2年ぶりのリリースとなったこの3rdと4thだが、2枚とも非常に充実した仕上がりとなっている。

オーガニック・ネオ・ソウルと形容される彼女の音楽だが、今回の二作についてもアレンジは非常に抑制的で、それが彼女のシンガーとしての魅力を際立たせているように思える。

ひとつのプレイリストにまとめて聴きこんでいたが、楽曲のクオリティが非常に安定しており、中だるみすることは一切無くいつまでも聴き続けられるような気がしたものだ。

今回の「Gold」もまた水面顔出しジャケに外れ無し、の仮説を立証してくれたように思う。











2024年1月29日月曜日

空耳











 

【今週の一枚】













Kali Uchis - Orquídeas [Geffen 2024]

コロンビア系アメリカ人のKali Uchisによる4thアルバムで2枚目のスペイン語の作品。

アルバム・タイトルはコロンビアの国花だという「蘭」。

幻想的なオープニング・トラック「¿Cómo Así?」で幕を開ける今作は全14曲収録されているが、正に変幻自在ともいうべき様々なスタイルで楽しませてくれる。

6曲目の「Te Mata」は正統派のコロンビア伝統歌謡を朗々と歌い上げているが、もう殆ど演歌の世界だ。

Rosalíaなんかもそうだけど、ラテン系のアーティストは違和感なく伝統歌謡を作品に取り入れるのは、自国の文化に誇りを持っとるんでしょうな。

先行して解禁された「Muñekita」はドミニカ出身のラッパー El AlfaとCity Girlsのラッパー J&Tをフィーチャーしたレゲトン曲でこれまた異彩を放っている。

流麗なメロディが印象的な「Tu Corazón Es Mío...」も素晴らしいし、ラスト・トラックの「Dame Beso/Muévete」は聴いているうちにカーニバルの喧騒のなかで踊っているかのような錯覚に陥ってしまいそう。

それにしてもスペイン語詞って英語に比べて「空耳ワード」が多いように思えるんだけど気のせいだろうか。






2024年1月22日月曜日

勝負










 

【今週の一枚】













Awich - THE UNION [and music 2023]

前作「Queendom」から一年半、Awichのニュー・アルバムがリリースされた。

先行して発表されていた「RASEN in OKINAWA」が素晴らしかったので大いに期待していたが、今回もまた溢れんばかりのエナジーを感じさせる力作に仕上がっている。

今作の発表を受けて11月にはKアリーナ横浜単独公演を敢行、18,000人にも及ぶ観客を熱狂させたというのだから凄まじい。

先日「踊る!さんま御殿!!」を観ていたらAwichが出演していたので大変驚いたのだけど、今回のアルバムを聴くにつけ、彼女は日本のヒップ・ホップ・シーンに軸足を置いたままで本気でメジャーなフィールドで勝負しようとしているのだろう。

ゆりやんレトリィバァが参加した「Bad Bitch 美学 Remix」も素晴らしいが、この曲に参加しているLANAという若いアーティストの歌唱力には度肝を抜かれた。

終盤の「かくれんぼ」から「Twinkle Stars」に連なるスイート&メロウなムードも実に味わい深く、Awichのシンガーとしての多面性を感じさせてくれる。

彼女が最初のEPをリリースしたのは2006年らしいので、既に長いキャリアを誇るワケだけど、その佇まいを見るにつけ、幾つになっても今のテンションを保ったまま活動をし続けているように思えてならない。






2024年1月15日月曜日

オプティミズム











 

【今週の一枚】













Penguin Cafe - Rain Before Seven...[Erased Tapes 2023]

Arthur Jeffes率いるPenguin Cafeの4年ぶりのニュー・アルバム。

コロナ禍をきっかけに伊トスカーナに家族で移り住み、彼の地で構想を練り上げ作品作りが進められた模様。

バンドのベーシストが共演したセネガルのアーティストから譲り受けたというパラフォンという木琴をはじめメロディカやウクレレ、クアトロなど多彩な楽器が演奏に使用され、作品に独特な雰囲気を醸し出している。

共同プロデューサーにはErased Tapesの主宰者であるRobert Rathsが名を連ね、リズム面でのアプローチに大いに貢献したようだ。

オプティミズムが作品の大きなテーマのひとつらしいが、その象徴ともいえるトラック「Galahad」には大いに感銘を受けた。

アルバム・タイトルは英国の古い諺「Rain before seven, fine before eleven.7時前の雨は11時には晴れる(そのうち良くなる)」から採られたものなのだとか。







2024年1月9日火曜日

変貌


















 【今週の一枚】













Julie Byrne - The Greater Wing [Ghostly International 2023]

NYのフィメイルSSW、Julie Byrneの6年ぶりとなる3rdアルバム。

2017年にリリースされ好評を博した前作「Not Even Happiness」発表の翌年に今作の楽曲を書き始め、2020年にレコーディングが開始されたが長年のコラボレーターであったEric Littmannが2021年に急逝するという悲劇に見舞われ制作作業が中断、新たにAlex Somersをプロデューサーに迎え完成に漕ぎ付けた模様。

元々彼女の持ち味である繊細でリリカルな幽玄アシッド・フォークをベースにしつつ、Eric Littmannのシンセ、Marilu DonovanのハープやJake Falbyによるストリングスが作品に彩りを添え、アンビエントの感触を残しつつもダイナミックなスケール感すら感じさせる作風に変貌している。

アコースティック・ギターを排した4曲目の「Summer Glass」などは正に新機軸に挑戦した楽曲と言えるのでは。

今作はGhostly Internationalレーベルから発表され、マスタリングはTaylor Deupreeが手掛けているそうだ。