2022年11月28日月曜日

哀しみ











 

【今週の一枚】













Loyle Carner - Hugo [AMF Records 2022]

サウス・ロンドンのラッパーLoyle CanerことBenjamin Gerard Coyle-Larnerによる3年振りの3rdアルバム。

サッド・ホップという言葉を知ったのはArms and Sleepersの2017年作「Life Is Everywhere」を通じてだったが、このLoyle Canerの音楽も正にそんな呼称がぴったりくるような、実に内省的で繊細なものである。

冒頭を飾るリード・シングル「Hate」は攻撃的でありながらもどこか切なさも感じさせるし、それに続く「Nobody Knows」の壮大なコーラスは崇高さすら醸し出している。

本作には盟友的存在のJordan RakeiやAlfa Mistが参加、Madlib、kwes.等がプロデューサーを務めている。







2022年11月21日月曜日

物騒














 【今週の一枚】












Skullcrusher - Quiet the Room [Secretly Canadian 2022]

頭蓋骨割り、とはなんとも物騒でおどろおどろしいネーミングだが、NY出身でLAを拠点に活動するフィメイルSSW、Helen Ballentineのソロ・ユニット。

眉目秀麗で可憐極まりない容貌の彼女、その奏でる音楽も実に繊細で美しい。

Big ThiefやBon Iver関連で名高いAndrew Sarloをプロデューサーに迎え、Noah Weinmanがコラボレーターとなって制作されたデビュー・アルバム。

Secretly Canadianレーベルの看板のひとつに成り得るポテンシャルを秘めているように思えた。

リード・シングル 「Whatever Fits Together」やタイトル・トラック「Quiet The Room」も良いが、個人的にはM11「Window Somewhere」やラストの「You are my House」がツボ。

聴くたびに心洗われるような感覚に陥ってしまう。





2022年11月14日月曜日

Trilogy?
















 【今週の一枚】













Fred again.. - Actual Life 3 (January 1 - September 9 2022) [Atlantic Records UK 2022]

敏腕プロデューサーとして名を馳せるFred again..ことFred John Philip Gibsonは昨年2枚のソロ・アルバムをリリースしている。

それぞれ「Actual Life」というタイトルが冠された作品は録音時期が2020年の4月14日から12月17日、そして2021年の2月2日から10月15日の2枚で、去年の年間ベスト・アルバムはどちらかに絞り切れずに、2枚をダブル・アルバム扱いにして選出した。

そして今年また同じくタイトルを「Actual Life」とし、今度は元旦から9月9日までが収録されている。

今作を含めた3作品が三部作として終結するのか、これからも「Actual Life」シリーズが続いていくのかは知る由も無いが、ひとつだけ言えるのは今作も前2作にひけをとらない充実作だという事だ。

彼のSNSなどをフォローしていると、その殆どが自身のステージの喧騒と高揚感を捉えた映像で埋め尽くされていて、本当にフロアーの現場を愛しているのがひしひしと伝わってくる。

しかし今回の3作目の「Actual Life」を聴くにつけ、全編にわたって繰り広げられるメランコリックなメロディは彼のソングライターとしての手腕が並々ならぬものである事を再確認させてくれる。

来年くらい来日してくれんかなあ。








2022年11月7日月曜日

村正










 

【今週の一枚】













Mura Masa - Demon Time [Anchor Point Records 2022]

今年のフジロックで来日、ホワイト・ステージで大トリを務めた英国ガーンジー島出身のプロデューサーMura MasaことAlex Crossanによる2年ぶりの3rdアルバム。

パンク・ロック寄りのアプローチを見せた前作から、国際色豊かなダンス・ミュージックへの回帰を果たした作品に仕上がっている。

パンデミック期間中にかなり精神的に落ち込んだ時期があったらしく、8か月近く全く音楽が作れなかったそうだが、エクササイズを始めたりセラピーを受けたりして徐々に回復を果たした模様。

アルバム・タイトルのDemon Timeは英語のスラングで「夜間にパーティで羽目を外す」みたいな意味で使われるそうだが「何かに没頭する」というニュアンスもあるそうで、それをネガティブな意味でなく「楽しい事に没頭する =Have Fun」というコンセプトで作品作りが進められたそうだ。

多彩なゲスト陣が多数参加しているが、昨年4ADからアルバムを出したErika de Casierは自分の作品よりコッチのほうがハマってるのでは、なんて思わされたし、日本人ラッパーTohjiが参加したM3「Slomo」は今作のハイライトと言えると思う。

全12曲で収録時間30分と短めだが、内容は実に濃密。

アートワークはSEGAのキャラクターSonic the Hedgehogにインスパイヤされたものなのだとか。