2025年8月25日月曜日

旗手










 

【今週の一枚】














Ninajirachi - I Love My Computer [NLV Records 2025]

Ninajirachiは豪州人プロデューサーNina Wilsonによるプロジェクトで今作がデビュー・アルバム。

ポケモンのキャラクター「ジラーチ」にちなんで名付けられたそうで、幼少の頃から慣れ親しんだ日本のゲーム音楽から多大なインスピレーションを受けているそうだ。

シドニー近郊の自然豊かな環境で生まれ育ったという彼女、12歳の時にエレクトロニック・ミュージックに目覚め、以来徹底的にコンピューターに拘って音楽に向き合ってきたのだとか。

「私の音楽は全てコンピューターミュージック」と嘯くNinaだが、girl EDMの旗手として注目を集め、満を持して今作のリリースに漕ぎ付けた模様。

その才能は数々のアーティストの注目を集め、既にCharli XCXやPorter Robinsonのオープニング・アクトを務めた経験もあるのだそう。

不思議な質感のサウンドと独特のヴォイス・エフェクトが印象的な「CSIRAC」や叙情的なメロディが印象的な「Sing Good」には特に感銘を受けた。

「ฅ^•ﻌ•^ฅ」は最初「???」と思ったが、「Cat Interlude」を意味するようで、そういう遊びゴコロも微笑ましい。
今作リリース後一週間の都市別ダウンロード数は東京が一位だったそうで、本人も喜びのツイートをしている。
日本のカルチャーに多大な影響を受けて育ったオーストラリア人の電子音楽が日本で反響を呼んでいる現象はとても興味深い。





2025年8月18日月曜日











 

【今週の一枚】














yeule - Evangelic Girl is a Gun [Ninja Tune 2025]

グリッチ・プリンセスの異名で称されるシンガポール出身のNat Ćmielによるプロジェクト

yeuleの2年ぶりの4thアルバム。

アルバムのアートワークからしてかなり攻めまくっている印象が強いが、実際の音には良い意味で裏切られた。

実にフツーのガーリー・ポップなのだ。

元デイジー・チェインソウのケイティ・ジェーン・ガーサイドみたいなブッ飛びっぷりを想像しつつ聴き進めたところ、曲によっては往年のセイント・エティエンヌを彷彿とさせていたり、最近でいうとデジタル寄りのビーバドゥービーみたいな雰囲気も感じさせてくれる。

プロデューサーにはA. G. Cook、Mura Masaといった面々が名を連ねているが、彼女の持つポップな才能を上手く引き出していると言えるのでは。

音楽サイトの批評はあまり芳しくないものが多いように思えたが、コレはコレで十分アリなんではなかろうか。

6曲目の「Dudu」なんぞはメジャー・チャートを席捲してもオカしくないクオリティの高さだと思う。

意外と次作ではまたブッ飛びまくった作風だったりするのかも知れないけど。





2025年8月5日火曜日

人肌











 

【今週の一枚】













Rival Consoles - Landscape From Memory [Erased Tapes 2025]

エレクトロニック・アーティストにしてプロデューサーRyan Lee WestによるプロジェクトRival Consolesによる3年ぶりの9thアルバム。

RyanはRobert Raths率いるロンドンのErased Tapesレーベルが2007年に設立された際の最初の契約アーティストであり、以来ずっと同レーベルから作品を発表し続けている。

今作の制作に入る前に創作のスランプというか停滞期間があったそうで、それを乗り越えて作り上げられた全14曲収録時間58分の大作だ。

彼の音楽はTechno、House、Ambient、Drone、Electronicaと様々なエレクトロ・ミュージックのジャンルにカテゴライズされる性質のものだが、一貫して非常に無機質で機械的なサウンドが展開されているにも関わらず、どこか人肌の温もりめいたものも感じさせるところに独創性を感じさせてくれる。

タイトル・トラックにしてラストを飾る「Landscape from Memory」は制作意欲を失っていた期間を過ごしていたのち初めてエモーショナルに音作りに取り掛かるきっかけになった楽曲だそうで、パートナーに捧げられたという2曲目の「Catherine」と並んで思い入れの深いトラックである事は間違いなさそうだ。

個人的には10曲目の「In a Trance」に特に感銘を受けたが、是非一度フロアで大音量で聴いてみたいと思わされた。

昨年はレーベルメイトのKiasmosが感動的な来日公演を果たしてくれたが、Rival Consolesも来てくれんかなあ。