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【今日の一枚】
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13 & God - Own Your Ghost [Alien Transistor 2011]
哀感漂う旋律に絡みつくかのようなラップと緩急自在のサウンド、実にクールだ。
【今日の一冊】
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新田次郎 - 八甲田山死の彷徨 [新潮文庫]
「お話し中でありますが…」
将校の作戦会議の輪を更に取り巻くようにできていた下士官の輪の中から長身の下士官が進み出て、山田少佐に向って挙手の礼をすると、
「ただいま永野医官殿は進軍は不可能だと言われましたが、不可能を可能とするのが日本の軍隊ではないでしょうか、われわれ下士官は予定どおり田代へ向って進軍することを望んでおります」
その発言と同時に下士官の輪がざわめいた。そうだ、そのとおりだという声がした。更に、二、三名の下士官が進み出る気配を示した。
山田少佐は、容易ならぬ状態と見て取ると、突然軍刀を抜き、吹雪に向って、
「前進!」
と怒鳴った。
それはまことに異様な風景であった。作戦会議を開きながら、会議を途中で投げ出して、独断で前進を宣言したようなものであった。紛糾をおそれて先手を取ったといえばそのようにも見えるけれども、なにか、一部の下士官に突き上げられて、指揮官としての責任を見失ってしまったような光景であった。前進という号令もおかしいし、軍刀を抜いたあたりもこけおどしに見えた。神田大尉は顔色を変えた。永野軍医は、はっきりと怒りを顔に現わした。だがすべては終った。結論が出たのである。前進の命令が発せられたのであった。
子供の頃これや『八つ墓村』が「こわいえいが」の代名詞みたいな感じだったなー。