2025年4月28日月曜日

寓話










 

【今週の一枚】














Bon Iver - SABLE, fABLE [Jagjaguwar 2025]

ウィスコンシンの至宝Justin VernonのプロジェクトBon Iverの6年ぶりの5thアルバム。

12曲収録の今作は3曲の「SABLE」と9曲の「fABLE」の二部構成となっている。

今回の作品は彼が所有する地元のApril Baseでレコーディングが行われ、Dijon、Flock of Dimes、Danielle Haimがゲスト参加している。

それにしても彼の奏でる音楽は色々なジャンルの系譜に連なっているようでいて、彼にしか鳴らせないオリジナリティを強く感じさせてくれる。

インディー・フォークの括りにあるのは間違いないにしても、どこか神聖なイメージを纏ったカントリー・ゴスペルとでも言うべき性質のサウンドが展開されていて感動的だ。

なかでも特に感銘を受けたのは6曲目の「Walk Home」で、オート・チューンのエフェクトのコーラス、彼自身のバリトンとファルセットの歌声を存分に堪能できるトラックだ。

またラス前の「There's A Rhythmn」はロン・セクスミスの大名曲を連想してしまうが、こちらも本当に味わい深い。

以前インタビューに応えて「日本はツアーで行くのが一番好きな場所」と発言していたJustin、是非また来日してくれることを期待したい。




2025年4月21日月曜日

衰え知らず











 

【今週の一枚】














Perfume Genius - Glory [Matador 2025]

シアトル出身のPerfume GeniusことMichael Alden Hadreasによる3年ぶりの7thアルバム。

1stアルバム「Learning」をリリースしたのが2010年の事なので15年のキャリアを通じコンスタントに作品を届けてくれており、かつ駄作が一枚もないというのは圧巻と言えるのではないだろうか。

今回の作品も期待を裏切らないクオリティを誇っているが、彼の生み出す音楽がネクスト・チャプターに入ったと実感させてくれる。

オープニング・トラック「It's a Mirror」とAldous Hardingとのデュエットを披露した「No Front Teeth」と掴みの2曲からして感動的だが、5曲目の「Left For Tomorrow」、そして9曲目の「In a Row」の二つのトラックは突出した完成度を誇っていると思える。

長年のコラボレーターBlake Millsが今回もプロデューサーを務めており、ギタリストのMeg DuffyとGreg Uhlmann、ドラマーにTim Carr とJim Keltner、ベーシストにPat Kellyと多彩なゲスト・ミュージシャンが作品に彩りを添えている。

Perfume Geniusの勢いはこれからもまだまだ衰えそうになさそうだ。







2025年4月14日月曜日

代償














 

【今週の一枚】













Dean Wareham - That's the Price of Loving Me [Carpark 2025]

80年代末期から90年代初頭にかけて3枚のアルバムを残し、今なお米インディー・ロック界の伝説的存在として語り継がれるGalaxie 500。

そのフロントマンだったDean Warehamはバンド解散後もLunaや妻とのユニットDean & Brittaで活動を続けてきたワケだが、今回はソロ名義でのアルバムをリリースの運びとなった。

ソロでのアルバムは今回が初めてではないが、今作が大いに話題を呼んでいるのは全てのGalaxie 500作品を手掛けた重鎮Kramerが34年ぶりに全面的に作品に携わっている事実が故だろう。

ヴェルヴェッツのNicoやRed KrayolaのMayo Thompsonのカバー2曲を含む全10曲37分の収録時間の今回のアルバム、彼の長いミュージシャンとしての活動期間が充実したものであったであろう事をしみじみと実感させてくれる。

これまでの作品のなかで最もGalaxie 500っぽいサウンド、みたいな表現も目にしたが、あまりそういう印象はせず、リラックスしたムードに覆われつつも、決して弛緩することはない非常に良質なシンガーソングライター作品の様に感じられた。

レコーディングはLAのイーグルロックのスタジオでわずか6日間という期間で行われたそうだが、本当に味わい深い充実作だと言えるだろう。

なんだか聴く度にそこはかとない多幸感に包まれてしまうが、本当に良い年の取り方をされているなあ、とほっこり。








2025年4月7日月曜日

たそがれ











 

【今週の一枚】













Sam Akpro - Evenfall [ANTI- 2025]

サウス・イースト・ロンドンを拠点に活動するシンガーソングライターにしてプロデューサーSam Akproのデビュー・アルバム。

2019年の「Night's Away」でシーンに登場し2021年の「Drift」と2023年の「Arrival」の2枚のEPで注目を集めた彼、満を持して名門ANTI-レーベルから今作を発表した。

数多くの異色のアーティストが蠢くサウス・ロンドンの音楽シーンにあってもその存在は異彩を放っていると言えるだろう。

ガンビア人の母とコートジボワール出身の父を持つ彼、キングストン大学で生物医学を専攻していたのを中退してミュージシャンになったという経歴の持ち主だ。

その音楽はジャンルレスと称されることが多いようだが、あえて言えばポスト・パンクの系譜に連なるサウンドのように感じられた。

タイトル・トラックの「Evenfall」と「Tunnel Vision」、そして「Gone West」がシングル・カットされているが個人的には唯一の共作曲である2曲目の「Death By Entertainment」に深い感銘を受けた次第。

独創性に溢れ狂気を孕んだそのサウンド・スケープは実に中毒性の高いものだと言えるだろう。