2011年2月7日月曜日

SLR

カメラ買いました。
多分というか絶対使いこなせんでしょうけど…。

【今日の一枚】



Edie Brickell - Edie Brickell [Racecarlotta Records 2011]

ウナギイヌ

【今日の二冊】



有吉佐和子 - 芝桜 [新潮文庫]


 花柳界はお茶屋と待合と芸者屋の三者の利益にもとづいたルールがあって、芸者はそれに違反することができない。少なくとも一流と目される芸者たちは、茶屋の女将の口ききで芸者屋の承認のもとに旦那をとるのであって、客と芸者が第三者を交えずに交渉するのも、ましてそれを成立させるのなどは、芸者にあるまじきはしたないこととされていた。芸者の方でも、客から直接口説かれるようなお座敷は遠慮した。一人だけの客のところへ呼ばれて、そこで相手をしたとして、それっきりになっても文句が言えないし、なんの保障もないからである。客と芸者の間に、茶屋の女将が入っていれば、支度料がいくら、月定めの手当がいくらときっちりきめてもらえるし、男も相当の金を出した後では女に飽きても出しただけの金が惜しくて、そう簡単に花から花へ飛び歩くこともできなくなってしまう。どこの誰それと名のある男ならば、自分の持物が自分以外の男と浮気をしたのでは面子にかかわるから、その監視を頼む手前も大層な金を撒かねばならないのである。
 妙なもので、名のある男の肩入れをしている芸者には、男の好き心はそそられるらしくて、旦那の遠慮をするどころか、誘惑というものは空家の頃よりむやみと多くなるものなのである。そうなるとさらに妙なもので芸者は自信がつき、美しい女はいよいよ美しくなり、旦那はせっせと茶屋の女将が言うがままに金を貢ぎ、茶屋も待合も芸者屋も一層潤うという結構な循環が生れてくる。
 ところがそうした結構な輪の中に、組み込みそびれる人々が花柳界といえどもあるのであって、旦那運の悪い芸者、金持の取巻きとして出かけてきている客たち、あるいは金は唸るほどあるのに、生れついての貧乏性で、お茶屋に任せきれない吝な男などが、実にしばしばルール違反をしてしまう。そういう連中のために、三流の待合がかならずできて、結構繁盛しているし、表向きの旦那は一人もって、内緒の旦那を二、三人持つという芸者の剛の者なども現れて、一流のお茶屋も、一流の芸者屋も眉はひそめるものの、見て見ぬふりをしておかねばならないのは、結構な循環からあぶれた者も花柳界としては賑やかしに必要としているからである。



これぞまさしくエコシステム。