2024年4月1日月曜日

逸脱











 

【今週の一枚】













Juila Holter - Something in the Room She Moves [Domino 2024]

LAをベースに活動するJuila Holterによる6年ぶりとなる6枚目のアルバム。

前作「Aviary」を発表後は映画のサウンドトラックを手掛けたり、カレッジで音楽の講義を受け持ったりと様々な活動に携わっていた模様。

音響派の括りにカテゴライズされたり、アート・ポップといった形容やフリージャズやアンビエント・ミュージックからの影響も指摘される事の多い彼女の音楽だが、確固たる独自性を確立しているのは紛れもない事実だ。

今作においてはフレットレス・ベースのサウンドが特徴的だが、一時期のケイト・ブッシュの作品の影響を大きく受けていると本人も認めている。

アルバム・タイトルはThe Beatlesの楽曲「Something」の歌詞「Something in the way she moves」から着想したようでドキュメンタリー「Get Back」を観ていてひらめいたそう。

コロナ禍のなかで彼女は出産を経験しており、その事も今作の大きなインスピレーションとなっているようだ。

それにしても彼女のような独創性溢れるアーティストは往々にして難解でマニアックなサウンドの沼にはまりこみがちだと思うが、ポップ・ミュージックの枠組みから大きく逸脱することなくオリジナリティに満ちた大衆音楽を成立させている手腕は実に見事だと思う。