2024年5月27日月曜日

ぽろぽろ
















 【今週の一枚】













marucoporoporo - Conceive the Sea [flau 2024]

marucoporoporoは愛知県在住の女性アーティストで今作がデビュー・アルバム。

2018年にリリースした1stEP「In her dream」で注目を集めた後、6年の時を経て待望のフル・アルバムの発表に漕ぎ付けた。

それにしても「まるこぽろぽろ」というネーミング、最初は洒落のつもりだったんだろうけど、それをずっと名乗り続けているのは、何らかの拘りが有るのだろうか。

とはいえ彼女の音楽に向き合うアティチュードは真摯そのものと言え、一枚のアルバムを通じて深遠で、独特な浮遊感を纏いつつも一種の緊張感が保たれている。

元は中学生の頃に兄が買ったアコースティック・ギターを習ったのがきっかけで音楽制作にのめりこみ、シガー・ロスやアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ等に大きな影響を受けたそうだ。

アルゼンチンのフアナ・モリーナなんかも引き合いに出されたりしたようだが、さもありなんと思える極上アンビエント・フォークと言えるだろう。

今作は画家で映像作家タキナオの2022年の展示音楽を制作したことが、今作の制作のきっかけとなったそうで、アルバムのカバーに用いられているオブジェは彼女が制作したとの事。

奇しくも先週末に名古屋のTeTeで開催されたリリースライブではタキナオさんのライトドローの空間演出をバックに演奏が行われた模様。

6月に神戸・名古屋で公演が行われたのちに8月には東京下北沢のHalf Moon Hallでライブが予定されているそうで、タイミングが合えば是非足を運んでみたいと考えている次第。







2024年5月20日月曜日

海沿い











 

【今週の一枚】













Iglooghost - Tidal Memory Exo [LuckyMe 2024]

Iglooghostはブリストルを拠点とするアイルランド人ビート・メイカーSeamus Rawles Malliaghによるソロ・プロジェクトで今作が3年ぶりの3rdアルバム。

弱冠18歳でFlying Lotus主宰レーベルBrainfeederから鳴り物入りで1stアルバムを発表した彼、今回のアルバムはLuckyMeレーベルよりリリースされている。

リズム・トラックの組み立てがかなりトリッキーなのにも関わらず、アルバム全体の統一感は実に見事だと思える。
アルバム全曲のプロデュースを自ら手掛けており、自身のヴォーカルに加えてOli XLやRocks FOEといった複数のゲストが多彩な歌声を披露。

今回の作品はケント州の海岸沿いにある古い自動車修理工場をスタジオに仕立てて制作されたそうで、周囲の荒涼とした自然にインスピレーションを得て、混沌としながらもどこか優美なサウンドに昇華している。

Igor Pjörrtによって手掛けられたアートワークが作品の世界観を映し出しているかのようで実に好印象。

彼の父親はパンク・ロックを愛好していて、大いに影響を受けて育ったようだが、そんな彼が作り出すのがゴリゴリのエレクトロニック・ミュージックというのも面白いし、ある意味このサウンドが彼にとってのパンクの解釈なのかも知れないな、なんて思わされたりもした。




2024年5月13日月曜日










 

【今週の一枚】













Tyla - TYLA [FAX Records 2024]

TylaことTyla Laura Seethalは南アフリカのヨハネスブルグ出身のアーティストで今作がデビュー・アルバム。

2002年生まれで現在22歳という彼女、デビュー・シングル「Getting Late」を発表したのは17歳だったというのだから驚かされる。

ジャンルに疎い自分には超高性能R&Bに聴こえる彼女の音楽だが、南アフリカ発祥のアマピアノというダンス・ミュージックにカテゴライズされているらしい。

今作に先立って2023年に発表されたシングル「Water」は世界的に大きな反響を呼び、ストリーミングで6億回以上再生されたというのだから凄まじい。

実際に素晴らしい楽曲だが、今作のラスト・トラックにTravis Scotをフィーチャーした同曲のリミックス・ヴァージョンが収録されており、これが最高としか言いようのないトラックに仕上がっている。

Kelvin Momoをフィーチャーした「Intro」で幕を開ける今作、それに続く「Safer」を始めとして正にキラー・チューンのオン・パレード状態。

MVも視聴出来る「Truth or Dare」や「Art」も破壊力抜群のトラックと言えるだろう。

第66回グラミー賞で「最優秀アフリカン音楽パフォーマンス賞」を受賞した彼女、今夏のサマーソニック2024で初来日を果たすようだが、是非とも単独公演を実現して欲しいものだ。











2024年5月7日火曜日

五十路











 

【今週の一枚】













Iron & Wine - Light Verse [Sub Pop 2024]

Iron & WineはSam Beamのステージ・ネームで今作が7年ぶりの7thアルバム。

過去にはJesca Hoopとの共作アルバム「Love Letter for Fire」をリリースしたり、Calexicoともコラボ作品「Years to Burn」を発表してきた彼だが、コロナ禍の雌伏の期間を経て本格的に活動を再開、今回の「Light Verse」の完成に漕ぎ付けた模様。

まずもって目を引くのが3曲目の「All In Good Time」がかのFiona Appleとのデュエット曲となっている事で、なんともリラックスしたムードが心地よいカントリー・ソングとなっている。

これまでの作品に比べると、ほんの少しアレンジがゴージャスになっている印象が強いトラックが並んでいるが、これはこれで味わい深い。

今作のプロデュースはSam自身が手掛け、Dave Wayがミキシングとエンジニアリングを担当している。

それにしてもその風貌からして年齢不詳な彼、今年やっと50歳を迎えるんですな。






2024年5月2日木曜日

 











【今週の一枚】













Arms and Sleepers - What Tomorrow Brings [Pelagic 2024]

ボストンで2006年に結成され現在はベルリンを拠点に活動するArms and Sleepersによる14枚目のフル・レングス。

元々Max Lewisとのデュオとして活動していたが、現在はMirza Ramicのソロ・プロジェクトとなっている模様。

これまで14枚のアルバムに加え20枚ものEPをリリースしているというのだから、かなり多作の部類に入るのではないだろうか。

今作のトラック・リストを見てみると全17曲収録されているうち最初の5曲、次に4曲・4曲・4曲という並びになっており、1枚のアルバムでありながら4部作とも言える構成となっている。

多様ななエレクトロニック・ミュージックの影響下にあると言えるArms and Sleepersだが、そのサウンドに一貫しているのはメランコリーを追求する姿勢であり、今作でもそのスタイルは全くブレていない。

Sofia Insuaをフィーチャーした「Belfast」はアルバムのハイライトの一つになっているが、同曲はケネス・ブラナー出演の同名映画にインスピレーションを得て制作されたものなのだとか。