【今週の一枚】
Tycho - Infinite Health [Ninja Tune 2024]
サンフランシスコを拠点に活動するScott HansenのプロジェクトTychoの4年ぶりの7thアルバム。
ISO50名義で写真家・グラフィック・デザイナーとしても活動する彼だが、その偏執狂的とさえ言えそうな音質への拘りが遺憾なく発揮された仕上がりとなっている。
フィジカルなエレクトロニック・ギターやベースのサウンド、ダイナミックなドラムは電子音とポスト・ロック的な生演奏の化学反応を意識したものと感じたが、驚いたのは全ての楽器をデジタルで演奏・処理しているそうなのだ。
てっきり大型のギター・アンプにエフェクターを繋いで大音量で演奏したものを取り込んで加工しているものと思いきや、そもそも最初からプラグインを使用しているとは。
音の印象とは裏腹にアルバム制作にあたって電子音楽的なプロダクションに回帰しており、特にブレイク、ドラムとリズム楽器にフォーカスして作品作りが進められたそうだ。
大部分の楽曲のプロデュースとエンジニアリングをGrizzly Bear’のChris Taylorが手掛けており、タイトル・トラックの「Infinite Health」にはCautious Clayのヴォーカルをフィーチャー。
本人も最も気に入っているというリード・シングル「Phantom」や終盤の「DX Odyssey」から「Totem」にかけての流れは、さぞやライブで盛り上がるだろうなあ。